富栄養化

最終更新日: 2026-09-03

富栄養化とは

(1) 富栄養化は、湖沼や内湾などの水域が窒素・りんなどの栄養塩類に富む状態へ移り、一次生産が増大する現象です。

(2) 人の活動に伴う生活排水などから栄養塩が流入すると、富栄養化が自然の変化より速く進行することがあります。

(3) 浄化槽管理士試験では、まず「窒素・りんなどの栄養塩が増える → 植物プランクトン等の一次生産が増える」という意味を本線として押さえます。

(4) 「広義の富栄養化」「狭義の富栄養化」という語の範囲は文献によって整理が異なるため、広義・狭義というラベルだけから一つの定義へ固定しません。既成有機物の外部流入まで含める用法などに出会った場合は、その文献が採用する定義を確認します。

(5) 長期的な自然過程として栄養状態が変化する場合と、人間活動に伴う栄養塩負荷によって進行が加速される場合を区別して説明することがあります。試験では、人為的負荷による水質問題と対策を中心に読みます。

栄養塩の増加と藻類の増殖

(6) 窒素・りんは、藻類や植物プランクトンの増殖に利用される栄養塩です。

(7) 窒素・りんなどの栄養塩が過剰に供給されると、植物プランクトンなどが異常増殖しやすくなります。

(8) 富栄養化に伴う植物プランクトン等の増殖は、湖沼ではアオコ、海域では赤潮につながることがあります。

(9) 富栄養化は、BODが高いことそのものを意味する現象ではありません。

BODは主に生物分解可能な有機物による酸素消費の大きさを表す指標であり、富栄養化とは評価している現象が異なります。

水質への影響

(10) 藻類や植物プランクトンが大量に増えると、水の着色、透明度の低下、異臭味などの水質障害につながることがあります。

(11) 増殖したプランクトンの死骸などの有機物が分解されると酸素が消費され、条件によっては水域のDOが低下します。

したがって、「富栄養化すると水中の酸素が必ず増える」と覚えるのは誤りです。日中の光合成で表層のDOが一時的に上がる場合があっても、水域全体では有機物分解による酸素消費や底層の貧酸素化が問題になることがあります。

貧栄養湖との比較

(12) 貧栄養湖と富栄養湖の比較は、個々の湖で必ず同じ値になるという意味ではなく、典型的な傾向として押さえます。とくにpHとDOは、水深・季節・時刻・水温成層・光合成と分解のバランスで同じ湖の中でも変わるため、湖全体を一つの高低だけで決めつけません。

(13) 水の色・透明度:貧栄養湖は典型的には青藍色〜緑色で透明度が大きく、富栄養湖は植物プランクトン等の増加により緑色〜黄緑色を呈したり、水の華で強く着色したりして、透明度が小さくなる傾向があります。

(14) pH:貧栄養湖では中性付近を示すことが多い一方、富栄養湖では植物プランクトンの光合成が活発な表層でpHが上昇し、アルカリ性側へ寄ることがあります。ただし、深層まで一様に高pHになるわけではないので、「富栄養湖はいつでも全層が強アルカリ性」とは覚えません。

(15) 栄養塩類・懸濁物質:貧栄養湖では窒素・りんなどの栄養塩類が少なく、富栄養湖では多いことが基本です。富栄養湖では植物プランクトンやその残骸等に由来する懸濁物質が多くなることがあります。ただしSSには鉱物粒子や外来の有機物等も含まれるため、SSの値だけを富栄養度そのものと同一視しません。

(16) 溶存酸素(DO):貧栄養湖では深水層でも酸素が保たれやすい傾向があります。富栄養湖では、表層は光合成によってDOが高く、ときに過飽和となる一方、深層・底層では有機物分解による酸素消費や成層の影響でDOが低下し、貧酸素・無酸素となることがあります。したがって「富栄養湖ではどの深さでもDOが必ず低い/高い」という一方向の暗記はしません。

(17) 底生生物:貧栄養湖では、酸素を多く必要とする底生動物が生息できる環境が保たれやすい傾向があります。富栄養化が進んで底層が貧酸素化すると、低酸素に比較的耐える生物が目立つようになり、貧酸素が強い場合には底生動物そのものが減少することもあります。「富栄養湖ほど底生生物が必ず多い」とはしません。

(18) 植物プランクトン:貧栄養湖では量が少ない傾向があり、富栄養湖では栄養塩の増加に伴って量が増え、条件がそろうとアオコなどの水の華を形成することがあります。

(19) 魚類:古典的な湖沼の栄養型比較では、貧栄養湖で冷水性・狭温性の魚類、富栄養湖でより広い温度範囲に適応する魚類が多いという傾向が示されます。ただし実際の魚類相は、水深・水温・DO・湖の連結性・放流や移入等にも左右されるため、「魚の種類や数だけで栄養型が必ず決まる」とは考えません。

(20) n-ヘキサン抽出物質は、鉱油類・動植物油脂類などの油分等を評価する水質項目です。窒素・りん、植物プランクトン、透明度などと並べて貧栄養湖/富栄養湖を直接判定する栄養状態の比較指標ではありません。

分解後の栄養塩はどうなるか

(21) 植物プランクトン等の死骸や排せつ物に含まれる有機物は、分解者の働きなどによって分解・無機化され、窒素・りん等が再び生産者に利用できる栄養塩の形へ戻ることがあります。一般的な「生産者・消費者・分解者と物質循環」の考え方は ecosystem-material-cycle で扱います。

(22) 湖内で生じた有機物が底泥へ堆積した後、分解等によって窒素・りんなどが水中へ再び供給されることがあります。このような水域内部からの栄養塩供給は、植物プランクトン等の増殖を支える側へ働くことがあります。

(23) 流域から生活排水等として入ってくる外部負荷と、底泥からの溶出や湖内での生物生産等による内部負荷を区別します。また、水域内の栄養塩が分解・無機化・溶出・生物による取り込み等を通じて再び利用される内部循環も、外部から新たに入る負荷とは別の過程です。内部循環は「栄養塩が何もないところから新しく生まれる」という意味ではありません。

(24) 富栄養化の試験上の本線は、外部からの過剰な栄養塩負荷によって一次生産が増えることです。一方、既に水域へ蓄積した栄養塩の内部循環・底泥からの再供給は、富栄養化の状態が持続したり、改善を遅らせたりする要因になり得ます。「内部循環だけが富栄養化の唯一の原因」とは考えません。

窒素・りんとの関係

(25) 環境省は、富栄養化対策として湖沼や閉鎖性海域で窒素・りんに係る排水規制を実施しています。

(26) 湖沼の生活環境項目には、全窒素・全りんの環境基準が設定されています。

(27) 窒素・りんは水生生態系にとって本来必要な栄養塩であり、存在すること自体を有害とみなすものではありません。

富栄養化が問題となる水域では、過剰な栄養塩供給による負荷を適切に管理するという観点で捉えます。

覚え方・ひっかけ

  • 試験の本線は、栄養塩が多い状態へ移り、一次生産が増えること。
  • 「広義・狭義」の語だけで定義を固定せず、その文献の定義を確認する。
  • 自然に進む栄養状態の変化と、人間活動で加速される富栄養化を区別する。
  • 過剰な栄養塩供給は植物プランクトン等の異常増殖を促す。
  • アオコ・赤潮は富栄養化に伴って生じ得る代表的な現象。
  • BODの上昇そのものを富栄養化の定義にしない。
  • 貧栄養湖との比較では、栄養塩・植物プランクトン・透明度をまず本線にする。
  • pHとDOは水深・季節・時刻で変わるため、湖全体を一律の高低で覚えない。
  • 底生生物と魚類は生息環境の傾向として読み、単純な個体数だけで栄養型を判定しない。
  • n-ヘキサン抽出物質は油分等の指標であり、富栄養度の直接的な比較指標ではない。
  • 藻類等の有機物分解では酸素が消費される。
  • 死骸等の分解後、窒素・りんが再び栄養塩として利用され得るため、物質循環は「死骸が分解されたら終わり」ではない。
  • 外部負荷、内部負荷、内部循環を同じものとして扱わない。

出典・参考(2026-09-03確認)

※「広義・狭義」の境界は文献依存性があるため、試験対策本文では環境省等が一般に用いる栄養塩増加と一次生産増大を本線とし、用語上の揺れは注意事項として扱う。

富栄養化に関する問題