浄化槽の設備・機器とは
(1) 浄化槽は複数の槽と機器の組合せで処理を行います。各槽・機器の役割を取り違えないことが、構造・保守点検の問題を解く基礎になります。ここでは代表的な槽と機器を整理します。
主な槽・機器
- (2) 嫌気ろ床槽:ろ材を充填した槽で、酸素のない状態の微生物が有機物を分解しつつ、ろ材の表面や間隙で固形物を捕捉する。小型合併処理浄化槽の前段処理に多く用いられる。
- (3) ブロワ(送風機):接触ばっ気槽などへ空気を送り、好気性微生物に必要な酸素を供給する機器。エアリフトポンプの動力源にもなる。停止・能力低下は分解不良や嫌気化を招く。
- (4) 散気装置(散気管など):ブロワから送られた空気を細かい気泡にして水中へ供給し、酸素の溶け込み(溶存酸素の確保)と槽内の攪拌を促す。目詰まりすると気泡が偏り、ばっ気が不均一になる。
- (5) エアリフトポンプ:管内に空気を送り込み、気泡で水の見かけの密度を下げて水や汚泥を持ち上げる(揚水する)機器。汚泥の返送・移送や循環水の送水に使う。可動部が少ないのが特徴。
- (6) 流量調整槽:流入量の時間変動を一時的にためて緩和し、後段の処理槽へ送る水量を平準化する槽。ピーク時の過負荷や短絡を防ぐ。移送はポンプやエアリフトで行う。
- (7) ポンプ槽・フロートスイッチ:水位に応じてポンプをON/OFFさせるフロートスイッチで運転する。複数ポンプの交互運転、逆止弁、満水などの警報を備え、フロートの固着や閉塞に注意する。
- (8) スクリーン(夾雑物除去):流入部などで、し渣(トイレットペーパーや異物などの夾雑物)を捕捉し、後段の閉塞やポンプ故障を防ぐ。捕捉物がたまると閉塞するため、点検・清掃が必要。
- (9) 制御盤・タイマー・警報:ブロワやポンプの自動運転をタイマー等で制御し、停電・過負荷・満水などの異常を警報で知らせる。設定時刻や手動運転、警報履歴を点検で確認する。
- (10) マンホール・点検口:点検・清掃の出入口。施錠と耐荷重のある蓋を用い、密閉して臭気や雨水浸入を防ぎ、転落を防止する。かさ上げ部の荷重や破損にも注意する。
JOK-ST-040:高度処理設備の砂ろ過・活性炭吸着
(11) 高度処理設備は、主処理の後段などで処理水質をさらに改善するために追加する設備群であり、砂ろ過、活性炭吸着、窒素・りん除去等を一つの同じ原理として扱いません。
砂ろ過
(12) 砂ろ過は、水を砂等の粒状ろ材層へ通し、主として水中の懸濁・粒子状物質を捕捉して分離するろ過設備です。
(13) ろ過速度は、処理する水量をろ過面積で割った量として扱い、代表的には m/日 や m/h で表します。
(14) ろ過速度は単位ろ過面積当たりに通す水量を表す設計・運転指標であり、SS除去率そのものではありません。値が大きいほど除去率が必ず高い、という意味でもありません。
(15) 固定床の砂ろ過には砂の単層ろ過のほか、砂とアンスラサイト等を組み合わせる二層ろ過があります。ろ過層を支える支持層は、ろ過層そのものと区別して読みます。
(16) ろ過を続けて捕捉物が蓄積すると、ろ過部の通水抵抗や損失水頭・損失圧力が増える方向になります。
(17) 砂ろ過設備の洗浄・逆洗は、ろ材層に蓄積した捕捉物を排出し、通水状態を回復・維持するために行います。
(18) 洗浄の要否や時期を判断するとき、損失圧力・損失水頭などの通水抵抗の変化を利用する設備があります。洗浄条件や判定基準は設備仕様に従い、全設備で同じ固定値とはしません。
活性炭吸着
(19) 活性炭吸着は、活性炭の表面へ対象物質を吸着させて水から除去する処理で、粒子を機械的にこし取る砂ろ過とは主な除去機構が異なります。
(20) 活性炭は、水中のにおい・色や一部の有機物等の低減に用いられることがありますが、あらゆる物質を無制限に除去できるものではありません。
(21) 活性炭の吸着性能には限りがあり、使用に伴って対象物質に対する除去性能が低下し得るため、処理性能や運転条件を確認して交換・再生等を判断します。
(22) 砂ろ過装置と活性炭吸着装置を直列に配置する処理系もあります。この場合も、前者は主として粒子状物質のろ過、後者は吸着という役割の違いを区別します。
(23) ろ過速度、ろ材構成、洗浄条件、活性炭の交換・再生条件等は処理対象、設備構造、設計・型式により異なります。特定設備の数値を全ての浄化槽に共通する正常値として一般化しません。
粒状活性炭の破過・通水量
(24) 粒状活性炭へ通水を続けると、対象物質を吸着できる余力が入口側から次第に使われ、処理水中の対象物質濃度が上昇してきます。このように吸着処理の除去性能が低下して対象物質が処理水側へ現れてくることを破過として扱います。
(25) 破過点は、破過曲線上で処理水中の対象物質濃度が、あらかじめ設定した管理・許容濃度へ達した点です。活性炭が完全に飽和して一切吸着できなくなった点と同義ではありません。
(26) 破過判定に用いる設定濃度は、対象物質、処理目的、要求水質等によって決まるため、一つの濃度や一つの百分率を全ての活性炭設備へ共通の破過濃度として固定しません。
(27) 破過曲線は、処理水濃度 C や流出/流入濃度比 C/C0 と、処理量・累積通水量 V または運転時間との関係を表し、吸着性能が低下していく過程を読むために使います。
(28) 粒状活性炭層では、通水に伴って吸着能力を使い切った側と未使用側の間に吸着が進行している領域があり、この吸着帯が層内を移動して流出側へ近づくことが破過曲線の立ち上がりと対応します。
(29) 一定流量 Q で時間 t 通水したときの累積通水量 V は V = Q×t です。流量が変動する場合は、各時間区間の通水量を積算します。
(30) 流入濃度 Cin と流出濃度 Cout が対象期間でほぼ一定で、他の除去・生成・脱着を無視する単純化では、対象物質の除去量は (Cin−Cout)×累積通水量 で求められます。
(31) 濃度差を mg/L、累積通水量を m³ で使うと、1 mg/L × 1 m³ = 1 g なので、両者の積は g になります。
(32) 上の単純化で求めた除去量を使用した活性炭質量で割れば、単位活性炭質量当たりの見かけの吸着量を求められます。実設備では流入・流出濃度の変動、競合吸着、脱着等があるため、問題文で単純化条件が与えられた場合に限ってこの関係をそのまま使います。
(33) 粒状活性炭は使用の継続に伴って処理性が低下し得るため、処理水質、破過の進行、運転履歴、設備・活性炭の条件等を確認して交換・再生を判断します。「全設備で同じ日数だけ使う」「完全飽和まで必ず使う」とはしません。
ろ材物性との境界
(34) 空隙率、比表面積、充填率等は、どのろ材・担体についての値か、また分母や定義が何かを確認して扱います。生物膜を保持する嫌気ろ床・接触材・流動担体・生物ろ過担体の物性や充填条件は、それぞれ JOK-ST-004・005・009 等の処理方式側を正典とし、高度処理の砂ろ過・活性炭へ一括しません。
覚え方・ひっかけ
- 「空気を送る=ブロワ」「空気を気泡にして水に供給=散気装置」「空気で水を持ち上げる=エアリフトポンプ」と、空気に関わる機器の役割を区別する。
- 砂ろ過の中心は粒子の捕捉、活性炭の中心は表面への吸着。両方を同じ原理としない。
- ろ過速度をSS除去率と読み替えない。
- ろ過層と支持層を同じものとして扱わない。
- 活性炭の吸着能力を無限と考えず、性能低下・交換・再生の考え方を持つ。
- 破過点を「完全飽和点」と覚えない。設定した処理水濃度へ達した点として読む。
- 破過曲線の横軸が処理量・時間であるとき、曲線の立ち上がりを単純な「活性炭量の増加」と取り違えない。
- 特定設備のろ過速度や逆洗条件、破過濃度、交換周期を全国共通値として暗記しない。
出典・参考(2026-09-03確認)
JOK-ST-040 高度処理設備
- 環境省「コミニティ・プラント構造指針の改訂について」
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000139.html
- 砂ろ過設備のろ材構成・洗浄、砂ろ過と活性炭吸着の直列構成、活性炭吸着装置の構造・交換頻度・損失圧力に基づく洗浄を確認。
- 国土交通省「河川浄化施設に関する資料編」
- https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/inter/keizai/gijyutu/pdf/river_purify_j3.pdf
- ろ過速度を「ろ過面積あたりに浄化する水量」とする定義と単位を確認。
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」
- https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001879206.pdf
- 固定床砂ろ過の単層・二層ろ過、砂・アンスラサイト・支持層の区別、設備に応じたろ過速度の設定を確認。
- 厚生労働省「水道の給水せんに取付ける家庭用浄水器の使用について」
- https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5437&dataType=1
- 活性炭が物質を表面へ吸着すること、対象物質によって除去性能が異なり使用に伴い性能が低下し得ることを確認。
- 「水道維持管理指針 2006 7.浄水施設・13.水質管理(抜粋版)」
- https://www.mlit.go.jp/common/830003652.pdf
- 7.12「活性炭吸着設備」および参考7.15で、粒状活性炭の通水継続に伴う処理水質悪化、破過点、処理水濃度と処理量の破過曲線、吸着帯の成長を確認。
- 厚生労働省 水質基準逐次改正検討会資料「水道における有機フッ素化合物について」
- https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001234729.pdf
- 粒状活性炭での破過と破過点の定義、対象物質によって破過時期が異なる実例を確認。
- 国土交通省「水道事業者等によるPFOS及びPFOA対応マニュアル」
- https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/content/001992451.pdf
- 粒状活性炭は使用継続で処理性が低下し適切な時期の交換が必要であること、炭種・水質で吸着性能が異なることを確認。
その他の代表設備
- 環境省「浄化槽関連情報」
- https://www.env.go.jp/recycle/jokaso/
※高度処理設備の数値・構造は設備ごとの差が大きいため、試験では原理・構成・指標の意味を押さえ、個別数値を問う場合は問題文・設計資料・型式資料の条件を優先します。