放線菌系微生物と持続性発泡
(1) 活性汚泥の持続性発泡・スカム形成では、Gordoniaや旧来Nocardia類として扱われてきたミコール酸含有Actinobacteria系の微生物が原因候補になることがあります。ただし、泡があるだけで放線菌系微生物が原因と確定しません。
(2) これらの一部は菌体表面の疎水性が高く、空気と水の界面や気泡へ付着しやすい性質を持ちます。ばっ気で生じた気泡へ菌体・フロックが付着すると、水面側へ運ばれ濃縮されやすくなります。
(3) 菌体表面の疎水性や、微生物が産生する界面活性物質等が関与すると、気泡が壊れにくくなり、持続性の泡や厚いスカムとして水面へ集積することがあります。
(4) この発泡は「放線菌が大量のガスを作るから泡になる」と単純化しません。主に、ばっ気等で生じた気泡へ疎水性菌体等が付着し、泡が安定化して水面へ濃縮される機構として理解します。
(5) 長い汚泥齢、低いF/M、油脂等の流入が放線菌系発泡と関連する報告はありますが、処理方式・菌群・流入条件に依存します。「この条件なら必ず発泡する」という固定判定には使いません。
(6) 現場で発泡を見たときは、洗剤等の界面活性剤流入、負荷変化、ばっ気、MLSS、SV/SVI、汚泥状態等も含めて切り分けます。外観からの原因診断と運転調整は troubleshooting で扱います。
放線菌と芽胞形成菌を混同しない
(7) BacillusやClostridium等で知られる内生芽胞(endospore)は、菌体内部に形成される耐久性の高い休眠構造です。増殖のための通常の胞子と同じものではありません。
(8) Actinobacteriaを一括して「内生芽胞を作る細菌」とは扱いません。Gordonia等の代表的な発泡関連菌を、BacillusやClostridiumの内生芽胞形成菌と同じ理由で耐久性芽胞を作る群として理解しません。
(9) Streptomyces等の放線菌でいう胞子や菌糸の分節は、Bacillus / Clostridium型の内生芽胞とは別の構造・形成様式です。「放線菌に胞子という語が出る = 内生芽胞」とは読みません。
(10) 浄化槽管理士では、細菌分類学を細かく暗記するより、放線菌系発泡の機構と内生芽胞との非同義性を区別できることを優先します。
責務境界
actinobacteria-foaming: 疎水性菌体・気泡付着・泡安定化と、内生芽胞との区別を扱う。biological-treatment: 基質利用、異化・同化、菌体合成、増殖・死滅など生物処理の共通原理を扱う。activated-sludge-microbiology: 活性汚泥の生物群と生物相観察を扱う。troubleshooting: 実槽の発泡・スカムについて、外観・流入条件・MLSS・SV/SVI・ばっ気等から原因候補を切り分ける。
出典・参考(2026-09-05確認)
- U.S. EPA, Summary Report: The Causes and Control of Activated Sludge Bulking and Foaming
- 放線菌系微生物と持続性発泡、疎水性菌体の関係を確認する技術資料。
- Gordonia / Mycolataの発泡、疎水性、界面活性物質に関する査読研究を、発泡機構の補助根拠として使用。