窒素除去型浄化槽とは
(1) 窒素除去型浄化槽は、BOD等の有機物除去に加えて、流入水中の窒素を硝化・脱窒等によって低減する処理機能を持つ浄化槽です。
(2) 窒素除去型浄化槽には、脱窒ろ床接触ばっ気方式、硝化液循環活性汚泥方式など、異なる単位装置構成・処理方式があります。
(3) 「窒素除去型」という名称だけから、すべての浄化槽が同じ槽配列・同じ循環経路・同じ管理値を持つとは判断しません。
まずここだけ:窒素はどうやって水から出るか
(4) 汚水中の窒素は、微生物の働きで段階的に形を変えます。大づかみには、有機物中の窒素 → アンモニア態窒素 → 亜硝酸態窒素 → 硝酸態窒素 → 窒素ガスという流れで考えます。最後に窒素ガスになって水中から抜けるところまで進んで、主要なT-N除去につながります。
| 段階 | 窒素の変化 | 主な環境 | まず覚えること |
|---|---|---|---|
| アンモニア化 | 有機態窒素 → アンモニア態窒素 | 生物分解が進む場所 | 有機物に含まれていた窒素がアンモニア側へ移る |
| 硝化 | アンモニア態窒素 → 亜硝酸態窒素 → 硝酸態窒素 | 好気 | 酸素を使って酸化態窒素へ変える。亜硝酸は途中段階 |
| 脱窒 | 硝酸態・亜硝酸態窒素 → 窒素ガス | 無酸素 | 酸化態窒素を窒素ガスへ戻す。利用できる電子供与体が必要 |
| 系外へ移る | 窒素ガス → 大気 | — | 水に残っていた窒素が気体として水系外へ出る |
(5) 硝化は、酸素がある場所でアンモニア側の窒素を亜硝酸・硝酸側へ変える工程です。脱窒は、溶存酸素が少ない無酸素の場所で、硝酸・亜硝酸側の窒素を窒素ガスへ変える工程です。「硝化した=窒素が水から消えた」ではありません。
(6) 好気は微生物が使える溶存酸素がある状態、無酸素は溶存酸素は少ないが硝酸・亜硝酸などの酸化態窒素を利用できる状態、嫌気は自由な酸素も硝酸・亜硝酸も主要な電子受容体として利用しにくい状態として区別します。脱窒に必要なのは「嫌気だから何でもよい」ではなく、硝酸・亜硝酸を利用できる無酸素条件です。
(7) 脱窒では、硝酸・亜硝酸から酸素に相当する部分を受け取って反応を進めるために、電子を渡す側の物質が必要です。流入水中の有機物などはこの電子供与体として使われます。炭素を含む有機物が電子供与体になることが多いため「炭素源が必要」と説明されますが、すべての方式で外部薬剤を追加するという意味ではありません。
(8) 硝化では水素イオン(H+)が生じる方向に反応が進み、アルカリ度を消費します。アルカリ度が不足するとpHが低下しやすくなり、pHが大きく下がると硝化自体も進みにくくなることがあります。試験では「硝化 → アルカリ度消費 → pH低下方向」という因果を先に押さえます。
(9) 実槽では、好気側で硝化に必要な酸素を確保し、そこでできた硝酸・亜硝酸を含む水を無酸素側へ循環させ、脱窒に利用できる有機物等がある状態をつくります。そのためDO、pH・アルカリ度、水温、循環実量、流入有機物の状態を別々の暗記項目ではなく、一連の窒素変換を成立させる条件として読みます。
窒素の形態とT-N
(10) 浄化槽内の窒素は、有機態窒素、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素など複数の形態で存在します。
(11) 全窒素(T-N)は、これら各種窒素化合物に含まれる窒素の総量を評価する指標です。
(12) ある窒素形態が別の窒素形態へ変化しても、それだけで水中のT-Nが十分に除去されたとは限りません。
硝化
(13) 硝化は、アンモニア態窒素を亜硝酸態窒素や硝酸態窒素へ酸化する生物反応です。
(14) 硝化は、酸素を利用する好気性側の反応です。
(15) 硝化を進めるには、硝化を担う生物が利用できる酸素を確保する必要があります。
(16) 硝化だけでは主として窒素の形態を酸化態へ変えるため、硝化の成立だけをもって窒素除去全体が完了したとは判断しません。
(17) 環境省の窒素除去型小型合併処理浄化槽維持管理ガイドラインは、代表的な好気性生物処理装置についてBOD除去と硝化を主な処理機能として示しています。
脱窒
(18) 脱窒は、硝酸態窒素などの酸化態窒素を還元し、主として窒素ガスへ変換する生物反応です。
(19) 脱窒は、溶存酸素が低く、酸化態窒素を利用できる無酸素条件で進める反応です。
(20) 脱窒工程を、硝化工程と同じように高いDOを維持する好気槽として扱いません。
(21) 脱窒反応には、酸化態窒素を還元するための電子供与体となる有機物等が必要です。
(22) 前段脱窒方式では、流入水中の有機物を脱窒の電子供与体として利用できる場合があります。
(23) 外部水素供与体をすべての窒素除去型浄化槽で必ず添加するとは一般化しません。
(24) 現行の環境省関係浄化槽法施行規則は、水素供与体等の薬剤を使用する場合、その供給量を適度に調整することを求めています。
(25) 脱窒で窒素ガスへ変換され水中から系外へ移ることで、T-N低減に寄与します。
硝化液循環
(26) 硝化液循環は、好気側で生成した酸化態窒素を含む処理水を脱窒工程へ戻し、脱窒に利用するための循環です。
(27) 硝化液循環は主処理水の流れとは別に、後段側から前段側へ戻る補助的な流れとして読みます。
(28) 硝化液が前段へ戻っても、主処理水の基本的な処理順序そのものが逆転するわけではありません。
(29) 現行の環境省関係浄化槽法施行規則は、循環装置を適正に作動させることを求めています。
(30) 環境省の維持管理ガイドラインは、循環液量を測定することを示しています。
(31) 同ガイドラインは、循環比が適正に保持されるよう循環装置を調整することを示しています。
(32) 循環量が不足すると、脱窒工程へ戻る酸化態窒素の量が不足し、窒素除去性能へ影響する場合があります。
(33) 循環量は多いほど常によいとは限らず、過大な循環では水理条件、酸素持込み、有機物利用条件等が変化し得ます。
(34) 適正な循環量・循環比は、処理方式、型式、流入量・水質、運転条件等により異なります。
(35) 環境省の維持管理ガイドラインは、所期の処理性能を満足しない場合の措置例として循環水量の調整を挙げています。
DOの読み方
(36) DOは、好気側の酸素供給状態や無酸素側への酸素持込みを読むための重要な管理指標です。
(37) 硝化を担う好気性生物処理槽では、硝化に必要な酸素が確保されているかを確認します。
(38) 脱窒側では、高いDOを維持するのではなく、脱窒が成立する無酸素条件を確保できているかを確認します。
(39) 環境省のガイドラインは、脱窒ろ床接触ばっ気方式の接触ばっ気槽について、槽内DOを均等におおむね1.0 mg/L以上に保持する具体例を示しています。
(40) このおおむね1.0 mg/Lという値を、すべての窒素除去型浄化槽の全槽に共通する一律DO設定値とは扱いません。
(41) DOが所定範囲に見えても、それだけで硝化・脱窒・T-N除去の全体性能が正常とは断定しません。
pHとアルカリ度
(42) アルカリ度は、水が酸を中和する能力を表す指標で、pHの変化を緩衝する能力と関係します。
(43) pHとアルカリ度は関連しますが、同じ物理量ではありません。
(45) アルカリ度が不足する条件では、硝化の進行に伴ってpHが低下することがあります。
(46) pHが大きく低下すると、硝化反応の進行へ悪影響を与える場合があります。
(48) 脱窒によるアルカリ度生成は、硝化で消費されたアルカリ度の一部を回復する方向に働きます。
(49) 「硝化でアルカリ度を生成し、脱窒で消費する」と方向を逆に覚えません。
(50) 現行の環境省関係浄化槽法施行規則は、水素イオン濃度調整剤を使用する場合、その供給量を適度に調整することを求めています。
(51) pH異常があっても、その値だけから原因を一意に断定せず、硝化状態、アルカリ度、流入水質、薬剤、循環等と合わせて判断します。
温度・流入条件・炭素源
(52) 環境省の窒素除去型小型合併処理浄化槽維持管理ガイドラインは、生物学的硝化脱窒法の留意条件として槽内水温が13℃を下回らないことを挙げています。
(53) 同ガイドラインは、実流入汚水量が計画汚水量を大幅に下回らないことを留意条件として挙げています。
(54) 同ガイドラインは、流入汚水のBOD濃度(mg/L)が窒素濃度(mg/L)の3倍を下回らないことを留意条件として挙げています。
(55) 13℃やBOD/N比3等は当該公的ガイドラインの留意条件であり、全型式・全状況の性能を保証する一律境界値ではありません。
(56) 水温低下は硝化反応速度に影響し得るため、低温時の窒素形態変化や処理性能を注意して読みます。
(57) 脱窒に利用できる有機物等が不足すると、酸化態窒素が十分に脱窒されず残る場合があります。
性能評価
(58) 窒素除去型浄化槽の性能評価では、槽内のDOやpHだけでなく、最終的に要求される放流水質が得られているかを確認します。
(59) 窒素除去性能を評価するときは、対象型式・設計で要求されるT-N等の性能項目を確認します。
(60) アンモニア態窒素が多く残る場合は、硝化不足を疑う手掛かりになります。
(61) 硝酸態・亜硝酸態窒素が多く残る場合は、脱窒や循環・炭素源条件を確認する手掛かりになります。
(62) T-Nが高い場合は、硝化・脱窒のどちらか一方だけでなく、流入負荷、温度、DO、pH、アルカリ度、循環、炭素源、汚泥・生物膜等を系統として確認します。
(63) BODが良好でも、窒素除去性能まで必ず良好とは限りません。
(64) アンモニア態窒素が低く硝化が進んでいても、酸化態窒素が脱窒されず残ればT-Nが高い場合があります。
(65) 窒素除去型浄化槽の要求T-N値を、すべての処理方式・規模・認定型式で一律の一つの値とは扱いません。
(66) 国土交通省の令和7年版公共建築工事標準仕様書では、小規模合併処理の脱窒ろ床接触ばっ気方式についてT-N 20 mg/L以下の処理性能区分を示しています。
(67) 同仕様書には、硝化液循環活性汚泥方式・三次処理脱窒脱りん方式等についてT-N 20、15、10 mg/Lの処理性能区分も示されています。
(68) これらの表の数値を、すべての既設・認定型式にそのまま適用する全国一律の単独判定値とは扱いません。
(69) 実際の処理目標・構造は、適用される告示構造、大臣認定、型式認定、設計図書等を確認して判断します。
MA-034 硝化不良・脱窒不良の診断
(70) JOK-MA-034では、T-N高値等を見たときに、まずアンモニア態窒素が残る「硝化側の不良」と、アンモニア態窒素は低いが硝酸態・亜硝酸態窒素が残る「脱窒側の不良」を分けます。そのうえで、水温、DO、pH・アルカリ度、汚泥量・SRT等の生物保持条件、循環実量、炭素源・水素供与体、流入負荷・水量、阻害性流入等を対象方式に応じて確認します。
(71) アンモニア態窒素が多く残る場合は硝化不足を、アンモニア態窒素が十分低下している一方で酸化態窒素が残りT-Nが高い場合は脱窒不足を優先して疑います。ただし窒素形態の一時点だけで原因を確定せず、前後の工程、水質推移、運転条件と照合します。
硝化不良を切り分ける
(72) 硝化不良を疑うときは、好気側のDO・散気状態、水温、pH・アルカリ度、流入負荷、汚泥量・生物膜状態、阻害性物質の流入履歴等を確認します。DO不足、低水温、pH低下等はいずれも原因候補ですが、一つの所見だけで原因を固定しません。
(73) 活性汚泥方式では、硝化を担う生物を保持できる汚泥量・SRT等の条件も確認します。必要なSRTは水温・方式・負荷等に依存し、生物膜方式では同じ指標をそのまま運転値として使えないため、全方式共通の固定SRTを設定しません。
(74) 硝化はアルカリ度を消費するため、pH低下を認めたときはpHだけでなくアルカリ度と硝化の進行、流入水質、必要に応じてpH調整剤の供給状態を照合します。pH調整剤を使用する施設でも、原因未確認で供給量を一律に増加させません。
脱窒不良を切り分ける
(75) アンモニア態窒素が低く酸化態窒素が残る場合は、脱窒側の無酸素条件、硝化液循環、利用可能な有機物・水素供与体、流入条件、撹拌・水流等を確認します。硝化が成立している所見を、さらに好気化すべき根拠とはしません。
(76) 循環装置は作動音や表示だけで正常とせず、対象型式で定める方法により循環液の実流量・循環比と流路を確認します。循環不足は脱窒へ酸化態窒素を戻せない一方、過大循環では酸素持込みや水理条件を変えるため、「多いほどよい」としません。
(77) 脱窒に利用できる有機物等が不足する条件では酸化態窒素が残ることがあります。水素供与体を使用する設備では供給装置・残量・実供給を対象手順に沿って確認しますが、外部炭素源が不要な方式もあるため、すべての窒素除去型で薬剤添加を必須としません。
(78) DOの役割は硝化側と脱窒側で異なります。硝化側では必要な酸素の確保を確認し、脱窒側では高いDOによる酸素持込みが脱窒条件を損なっていないかを確認します。「窒素除去不良なら全槽のDOを上げる」という操作は行いません。
数値を万能閾値にしない
(79) 環境省ガイドラインの水温13℃、BOD/N比3、特定方式のDOおおむね1.0 mg/L等は対象条件における留意事項・具体例であり、すべての認定型式の故障判定値や調整設定値ではありません。SRT、循環比、DO、pH・アルカリ度、薬剤供給量は対象型式・設計・維持管理要領書と実測条件を優先します。
原因対応後に窒素形態まで再確認する
(80) 原因候補を絞った後に、空気供給、汚泥管理、循環量、pH・アルカリ度管理、炭素源・水素供与体、流入条件等から必要な操作を選びます。硝化側と脱窒側で方向が逆になる操作もあるため、複数の設定を理由なく同時に最大化しません。
(81) 調整後は、アンモニア態窒素、亜硝酸態・硝酸態窒素、T-N等の窒素形態・最終性能と、DO、pH・アルカリ度、水温、循環実量、汚泥・生物膜状態等の関連条件を再確認し、変更内容と結果を記録します。
法定検査・維持管理との関係
(82) 環境省の法定検査判定ガイドラインは、脱窒槽・硝化槽等について水位・水流や撹拌状態を処理機能との関係で確認する考え方を示しています。
(83) 同ガイドラインは、循環装置の稼働状況を処理機能に関わる確認対象としています。
(84) 環境省の維持管理ガイドラインは、流入汚水量、循環液量、各単位装置流出水や生物反応槽内水の水質を測定・記録し、稼働状況・負荷状態を把握する考え方を示しています。
(85) 同ガイドラインは、測定・記録に目的に応じた適切な精度を有する方法を用いることを示しています。
型式差を残す
(86) 認定された窒素除去型浄化槽では、脱窒ろ床槽、嫌気ろ床槽、固液分離槽、接触ばっ気槽、担体流動槽等、同じ機能を担う単位装置名・構成が異なる場合があります。
(87) 硝化液の取出し位置、返送先、循環方法は型式によって異なります。
(88) DOの確認位置・管理目安は処理方式・型式によって異なります。
(89) pH調整剤の有無、種類、供給方法、設定値は型式・流入水質によって異なります。
(90) 水素供与体の有無、種類、供給位置、供給量は処理方式・流入条件によって異なります。
(91) 個別施設では、認定図書、型式認定資料、設計図書、維持管理要領書を確認し、その施設の処理フロー・設定・性能目標に従って判断します。
試験でのひっかけ
- 硝化と窒素除去を同義にしない。硝化は主として窒素形態を酸化態へ変える工程で、T-N低減には脱窒等が必要になる。
- 硝化側は好気、脱窒側は無酸素という役割を逆にしない。
- 硝化液循環を「多いほどよい」と覚えず、適正循環量を型式・流入条件に応じて調整する。
- アルカリ度の方向を逆にしない。硝化で消費し、脱窒で一部回復する。
- DO・pHが一つの目安内でも、それだけでT-N性能達成を断定しない。
- 13℃、BOD/N比3、DOおおむね1.0 mg/L等の公的ガイドライン値を全方式の一律管理値にしない。
- 「窒素除去型だからT-Nは全国一律20 mg/L」と覚えず、適用構造・認定性能を確認する。
- アンモニア態窒素が低くNOx-Nが残る状態を、硝化不足と取り違えて好気側の空気量だけ増やさない。
- 循環ポンプの作動音だけで循環量正常と判断しない。
出典・参考
2026-09-06確認。
- 環境省「窒素除去型小型合併処理浄化槽、膜処理型合併処理浄化槽、中・大型合併処理浄化槽、単独処理浄化槽の維持管理ガイドラインについて」https://www.env.go.jp/hourei/11/000288.html
- e-Gov法令検索「環境省関係浄化槽法施行規則」https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=359M50000100017
- 環境省「浄化槽法定検査判定ガイドラインについて」https://www.env.go.jp/hourei/11/000239.html
- 環境省「浄化槽法の運用に伴う留意事項について」https://www.env.go.jp/hourei/11/000243.html
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001888797.pdf
- 国土交通省「屎尿浄化槽の構造基準の改正について」関連通知 https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/105/81000262/81000262.html
※小型脱窒ろ床接触ばっ気方式のDO・水温・BOD/N比等は公的ガイドラインの具体例・留意条件として記載し、全窒素除去型浄化槽の一律管理値にはしていません。処理性能値は適用される告示・大臣認定・型式認定・設計図書を確認する前提です。