水中ポンプとは
(1) 水中ポンプは、ポンプ本体と電動機を水中に設置して液体を揚水・移送するポンプです。
(2) 浄化槽の排水等に用いられる代表的な水中ポンプでは、電動機で羽根車を回転させて液体へエネルギーを与えます。
(3) 水中電動ポンプは、空気を揚水管へ吹き込んで気液混相流を上昇させるエアリフトポンプとは揚水原理が異なります。
(4) 排水水中ポンプには、汚水・雑排水や浄化槽排水を移送する用途の製品があります。
(5) 水中ポンプは液体を揚水・移送する機械設備であり、それ自体が生物処理槽ではありません。
羽根車と汚水ポンプ
(6) 汚水・雑排水用の水中ポンプには、用途や通過させる固形物等に応じて異なる羽根車形式があります。
(7) セミオープン羽根車は、浄化槽排水用を含む排水水中ポンプで採用される形式の一例です。
(8) セミボルテックス羽根車も、汚水・雑排水用水中ポンプで採用される形式の一例です。
(9) ノンクロッグ形羽根車は、汚物を含む排水を扱う水中ポンプで採用される形式の一例です。
(10) したがって、「浄化槽用水中ポンプはすべて同じ羽根車形式」とは判断しません。
(11) 使用できる液体の種類、固形物の通過条件、液温等は機種ごとの仕様で確認します。
吐出量と全揚程
(12) 吐出量(流量)は、ポンプが単位時間に送り出す液体量を表します。
(13) 揚程は、ポンプが液体を持ち上げ、配管抵抗や圧力差を克服する能力を高さに換算して表す指標です。
(14) ポンプ選定では、実際の配管・水位条件に対して必要な全揚程を考えます。
(15) 水中ポンプの能力は、吐出量だけでなく、その吐出量をどの全揚程で得るかを組み合わせて確認します。
(16) 同じ「L/min」の表示だけを見て、揚程条件の異なる設備で同じ能力が得られるとは判断しません。
(17) 実際の吐出状態は、ポンプ特性だけでなく、吐出高さ、配管長、管径、弁類等による系統側の抵抗にも影響されます。
(18) 実施設では、必要吐出量と全揚程をポンプ性能曲線・型式仕様と照合します。
(19) 吐出量、全揚程、口径、出力を全浄化槽用水中ポンプに共通する固定値として扱いません。
揚水能力の低下
(20) 環境省の法定検査判定ガイドラインでは、ポンプの稼働状況が確認対象です。
(21) 同ガイドラインでは、ポンプの揚水能力低下を異常の程度に応じて評価します。
(22) 揚水能力の不足や故障によって処理機能へ影響する状態は、正常とは判断されません。
(23) ポンプが回転音を出しているだけでなく、実際に必要な揚水・排水が行われているかを確認します。
(24) ポンプ設備の欠落や著しい固定不良も、法定検査上の異常となります。
閉塞・異物と能力低下
(25) 吸込口やストレーナ等への異物付着・閉塞は、ポンプへ流入する水を妨げ、吐出量低下の原因になり得ます。
(26) 羽根車やポンプ内部へ異物がかみ込むと、回転の拘束、能力低下、過負荷等の原因になり得ます。
(27) 吐出配管側の閉塞や著しい抵抗増加も、必要な排水量が得られない原因になり得ます。
(28) 異物が多い汚水を扱うポンプでも、「閉塞していても正常」とは判断しません。
(29) ノンクロッグ形などの名称があっても、どのような異物でも絶対に閉塞しないことを意味しません。
(30) 揚水量が低下したときは、ポンプ本体だけでなく吸込側・羽根車・吐出側・水位条件を切り分けます。
空運転
(31) 空運転は、ポンプ内部に必要な液体がない、または液体が十分供給されない状態で運転することです。
(32) ポンプを空運転すると、冷却・潤滑条件が失われて異常発熱や損傷につながるおそれがあります。
(33) 水中ポンプを長時間空運転させることを、通常の運転方法とはしません。
(34) 水位が低下し過ぎた状態で運転が継続すると、機種によっては空運転・空中運転に近い状態となるおそれがあります。
(35) 最低運転水位や許容される運転状態は、ポンプの取扱説明書・設備仕様で確認します。
自動運転・水位制御との関係
(36) 排水水中ポンプには、水位変化に応じて自動運転する型式があります。
(37) 同じ用途の水中ポンプでも、非自動式の型式があります。
(38) 2台のポンプを自動交互・並列運転する機能を持つ型式もあります。
(39) したがって、すべての水中ポンプが同じフロート数・同じ自動運転シーケンスを持つとは限りません。
(40) フロートスイッチ、ON/OFF水位、高水位警報等の詳細は level-control(ST-032)で扱います。
(41) 制御盤、過負荷保護、警報、手動/自動切替等の詳細は control-panel-timer-alarm(ST-033)で扱います。
保護装置と型式差
(42) 排水水中ポンプには、過負荷、拘束、欠相等から電動機を保護する装置を内蔵した型式があります。
(43) 保護装置の種類、設定、復帰方式は機種ごとに異なります。
(44) 保護装置が作動したことは、閉塞や電気的異常等の原因が解消したことを意味しません。
(45) 保護装置が作動した場合は、型式資料・取扱説明書に従って原因を確認します。
原水・放流ポンプ槽との責務境界
(46) 原水ポンプ槽では、流入汚水を処理系へ揚水するために水中ポンプを使用する構成があります。
(47) 放流ポンプ槽では、処理水を放流先へ揚水するために水中ポンプを使用する構成があります。
(48) influent-effluent-pump-tank(ST-020)はポンプ槽としての用途・水位を扱い、本項目は水中ポンプ本体の構造・能力・異常を扱います。
安全上の読み方
(49) 水中ポンプは電動機を含む電気機器であり、漏電・絶縁不良等の電気的異常を軽視しません。
(50) 異物除去、引上げ、分解等の作業を、通電・自動起動のおそれがある状態で行うことを前提にしません。
(51) 実際の電源遮断、ロックアウト、絶縁測定、引上げ・分解等の安全手順は、取扱説明書とMA / safety 側で扱います。
MA-025 水中ポンプの点検
(52) MA-025では、ポンプ本体の点検を「実吐出」「運転電流・保護状態」「絶縁状態」「閉塞・水位・揚程」「空運転防止」「着脱装置等の据付状態」をつないで判断します。ポンプ槽のフロート・交互運転・警報そのものは influent-effluent-pump-tank(MA-021)側、制御盤・タイマー・警報は control-panel-timer-alarm(MA-026)側の主題です。
(53) 作動音や運転表示だけで正常と判断せず、まず吐出先の流れ、水位低下、運転時間等から、必要な揚水が実際に行われているかを確認します。
(54) 運転電流を確認できる設備では、対象ポンプの定格電流、通常時・前回の記録、現在の吐出状態と合わせて評価します。排水水中ポンプの定格電流値は型式ごとに異なります。
(55) 運転電流が通常と異なる場合も、電流値だけで故障箇所を断定しません。吐出量、吸込部・羽根車・吐出配管の閉塞、全揚程、水位、保護装置の作動状況等と組み合わせて切り分けます。
(56) 絶縁抵抗は、電路相互間や電路と大地との間で電流が漏れにくい状態を評価する指標です。水中ポンプでは、絶縁劣化や漏電のおそれを軽視せず、対象型式の取扱説明書・点検基準に従って確認します。
(57) 絶縁抵抗の測定条件・判定値・測定箇所を、全水中ポンプに共通する一つの値や手順として扱いません。機種資料、設備側の条件、点検記録と照合します。
(58) 絶縁抵抗測定、端子・ケーブルの確認、引上げ、閉塞除去等の作業は、通電中・自動起動のおそれがある状態で行うことを前提にしません。必要な電源遮断、復電防止、資格・手順は対象設備の安全手順に従います。
(59) 水位が最低運転水位を下回る、吸込側へ十分な液が来ない等の状態で運転を継続すると、空運転・空中運転に近づくおそれがあります。空運転を「吐出確認のため長く回してよい通常点検」とは扱いません。
(60) 着脱装置を採用する機種では、ポンプが所定位置へ装着・固定されているか、接続部やガイド等に明らかなずれ・異物・損傷がないかを、対象型式の図書に従って確認します。
(61) 水中ポンプの着脱装置にはメーカー・型式ごとの差があり、他社品や別型式との互換性を前提にしません。交換・更新時はポンプ本体だけでなく、既設着脱装置との適合を確認します。
(62) 閉塞除去、据付是正、設定確認等の処置後は、実吐出、水位変化、異音・振動、保護装置の状態を再確認し、必要に応じて運転電流等も再確認します。
異常時の読み方
(63) 揚水量が不足するときは、必要全揚程とポンプ能力の組合せを確認します。
(64) 揚水量が不足するときは、吸込部・羽根車・吐出配管の閉塞や異物も確認します。
(65) 揚水量が不足するときは、槽内水位や吸込条件も確認します。
(66) モータが作動していても実際に排水されない状態を、正常なポンプ稼働とは判断しません。
(67) 保護装置が繰り返し作動する場合は、単に復帰を繰り返すのではなく原因確認が必要です。
試験でのひっかけ
- 水中ポンプをエアリフトポンプと同じ原理としない。
- 浄化槽用水中ポンプの羽根車を一種類に固定しない。
- 吐出量だけで能力を判断し、全揚程を無視しない。
- 異物閉塞や揚水能力不足を正常としない。
- 空運転を冷却に有利な通常運転としない。
- 自動運転・交互運転・保護装置を全機種共通としない。
- 代表機種の流量・揚程・固形物通過径等を全型式の固定値にしない。
- 作動音だけで正常判定せず、実吐出を確認する。
- 運転電流や絶縁抵抗を一つの共通値だけで判定しない。
- 着脱装置をメーカー・型式を問わず互換と決めつけない。
出典・参考
2026-09-01確認。
- 環境省「浄化槽法定検査判定ガイドラインについて」:ポンプ設備の固定、ポンプ稼働、揚水能力低下・不足・故障、原水/放流ポンプ槽の水位
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000239.html
- 環境省「合併処理浄化槽設置整備事業の推進体制の強化について」:流入/放流ポンプの設置、能力、固定、レベルスイッチとの干渉
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000054.html
- テラル「PL型 排水水中ポンプ」:セミオープン羽根車、浄化槽排水用途、自動/交互運転型式の例、流量・全揚程による製品選定
- https://www.teral.net/products/search/type?kishu=12100
- テラル「PV型 排水水中ポンプ」:セミボルテックス羽根車、自動運転型式、電動機保護装置の例
- https://www.teral.net/products/search/type?kishu=12200
- テラル「BO型 排水水中ポンプ」:ノンクロッグ形羽根車、汚水・汚物用途の例
- https://www.teral.net/products/search/type?kishu=12500
- テラルFAQ「排水水中ポンプの電動機仕様が知りたい。」:型式ごとの定格電流値等
- https://faq.teral.net/faq/show/15721
- テラルFAQ「絶縁抵抗」「絶縁抵抗値」:絶縁抵抗の意味と単位
- https://faq.teral.net/faq/show/3966
- https://faq.teral.net/faq/show/3967
- テラルFAQ「他社の着脱装置に、テラルの着脱装置用排水水中ポンプが取り付けられますか?」:着脱装置は統一規格ではなくメーカー仕様で異なる例
- https://faq.teral.net/faq/show/3218
- テラルFAQ「空運転」・「空転防止」:空運転の定義、異常発熱・損傷リスク
- https://faq.teral.net/faq/show/7728
- https://faq.teral.net/faq/show/3598
※吐出量、全揚程、口径、出力、固形物通過条件、最低運転水位、フロート構成、保護装置、定格電流、絶縁抵抗の判定条件、着脱装置等は型式・用途・設備条件で異なるため、実施設では認定図書・ポンプ性能曲線・取扱説明書を確認します。