散気装置・ばっ気とは
(1) ばっ気は、水と空気を接触させ、空気中の酸素などを水中へ供給する操作です。
(2) 散気装置は、ブロワなどから送られた空気を水中へ気泡として放出する装置です。
(3) ブロワは空気を圧送する機器であり、散気装置はその空気を水中へ放出する側の機器です。
(4) 好気性生物処理では、ばっ気により微生物が利用できる酸素を水中へ供給します。
(5) ばっ気によって生じる気泡上昇と水流は、槽内の混合・撹拌にも寄与します。
気泡と酸素移動
(6) 気相の酸素が気液界面を通って水中へ移ることを酸素移動といいます。
(7) 気泡は空気と水の接触界面をつくり、その界面を通じて酸素が水中へ移動します。
(8) 環境省の下水道分野の技術資料では、微細気泡散気装置等の導入により酸素移動効率を向上させる考え方が示されています。
(9) ただし、実際の酸素移動性能は気泡径だけで決まるものではありません。
(10) 酸素移動は、散気方式、空気量、水深、槽形状、水質、気泡の滞留や混合状態などの影響を受けます。
(11) 気泡径や散気孔径を、すべての浄化槽に共通する一つの固定値として扱いません。
空気供給量と撹拌水流
(12) ばっ気装置は、必要な酸素供給と槽内水流が得られるよう空気供給量を調整して使用します。
(13) 空気供給量が不足すると、必要な酸素供給や撹拌が不足することがあります。
(14) 環境省の法定検査判定ガイドラインでは、ばっ気槽や接触ばっ気槽の撹拌水流の不均等は望ましくない状態として扱われています。
(15) 同ガイドラインでは、空気供給量を調整できない状態は処理機能へ影響する異常として扱われています。
(16) したがって、ばっ気は「常に最大風量にすればよい」とは判断しません。
(17) 必要な空気量や調整範囲は、認定型式・維持管理要領・機器仕様で確認します。
ばっ気強度
(18) ばっ気強度は、対象槽へ単位時間に供給する空気量を、その槽の有効容量で割って表す指標です。
(19) 送気量を Qair (m³/h)、対象槽の有効容量を V (m³) とすると、ばっ気強度は Qair / V で求めます。
(20) ばっ気強度の代表的な単位は m³/(m³・時) で、次元としては h⁻¹ に相当します。
(21) 空気供給量が L/min で与えられた場合、m³/h へは ×60÷1000 で換算してから槽容量で割ります。
(22) 例えば有効容量1.5 m³の槽へ50 L/min送気する場合、送気量は 50×60÷1000=3.0 m³/h、ばっ気強度は 3.0÷1.5=2.0 m³/(m³・時) です。
(23) ばっ気強度は槽容量当たりの送気量を表す指標であり、DO濃度そのものではありません。
(24) ばっ気強度が同じでも、散気方式、水深、水質、気泡径等が異なれば酸素移動効率や槽内DOが同じになるとは限りません。
(25) 適正なばっ気強度・送気量は処理方式、対象槽、認定型式、負荷条件等によって異なるため、一つの数値を全浄化槽の正常値として固定しません。
散気管の閉塞・破損
(26) 散気装置・散気管の閉塞は、空気の出方を悪化させ、処理機能へ影響し得る異常です。
(27) 散気装置の破損や欠落も、適正なばっ気を妨げる異常です。
(28) 散気装置は所定位置に固定されていることを確認します。
(29) 法定検査上のばっ気装置の確認には、関連する空気配管やオリフィス等も含まれます。
(30) 散気部の一部が閉塞すると、空気の出方や撹拌水流に偏りが生じることがあります。
(31) ブロワが運転していても、散気装置側の閉塞・破損があれば槽内ばっ気が適正とは限りません。
散気管の水平と空気の出方
(32) 環境省の維持管理ガイドラインでは、散気管が水平に保持されるよう点検することが示されています。
(33) 同ガイドラインでは、散気管が目づまりしないよう点検・管理することが示されています。
(34) 散気状態は、槽内での空気の出方や水流の偏りがないかを目視等で確認します。
(35) 一部だけ強く気泡が出て他の部分が弱い状態を、ばっ気量が十分だから正常とは判断しません。
左右・複数系統への空気配分
(36) 浄化槽には、空気を複数の散気系統や用途へ分配する構成があります。
(37) 空気配分は、各部で必要なばっ気・撹拌が得られるよう調整します。
(38) 左右・複数系統の適否は、バルブ開度そのものだけでなく、実際の気泡の出方、水流、DO等の状態を見て判断します。
(39) 複数のバルブを同じ開度にしただけで、配管抵抗や散気部の状態が異なる各系統へ必ず同じ空気量が流れるとは限りません。
(40) 空気の出方や撹拌水流の偏りは、空気配分不良、配管・散気部の閉塞、設置状態等を確認する手掛かりになります。
(41) バルブ、オリフィス、空気配管の構造や具体的調整方法は pipes-valves(ST-031)およびMA側で扱います。
DOとの関係
(42) DO(溶存酸素量)は、ばっ気によって水中へ移った酸素の状態を評価する指標であり、ブロワの吐出風量そのものではありません。
(43) 法定検査では、ばっ気槽等で溶存酸素量が適正に保持されているか評価できる部位を測定します。
(44) 環境省の維持管理ガイドラインには、接触ばっ気槽で槽内均等におおむね1.0 mg/L以上を保持するという対象方式に応じた目安があります。
(45) このDO値は当該通知・対象槽での維持管理上の目安であり、全処理方式・全運転状態に共通する唯一の固定値ではありません。
(46) DOが測定点で確保されていても、槽内に著しい撹拌水流の偏りや死水域があれば、ばっ気状態をそれだけで正常とは判断しません。
MA-023 散気状態と空気量調整の進め方
(47) JOK-MA-023では、気泡の出方、撹拌水流、空気配分、空気配管・バルブ、散気管の閉塞・水平・固定、DOを相互に確認し、必要な酸素供給と水流が得られるよう空気量を調整します。
(48) 調整前に、槽全体を見て気泡の強弱、水流の偏り、局所的な死水域の有無を確認し、どの系統・場所で異常が出ているかを把握します。
(49) 局所的に気泡が弱い場合は、直ちに総風量不足と決め付けず、系統ごとの空気配分、バルブ・オリフィス、空気配管、散気管の閉塞・破損・水平・固定状態を切り分けます。
(50) 空気配分は、バルブ開度の数値だけをそろえるのではなく、実際の気泡、水流、DO等の結果を見ながら、対象型式の維持管理条件に従って調整します。
(51) DOは代表性のある位置で確認し、測定値だけでなく、その位置の気泡・水流と槽内全体の偏りを合わせて評価します。
(52) 一点のDOを特定値へ合わせることだけを目的に空気量を増減せず、酸素供給、撹拌、空気配分、処理方式・型式の管理条件をまとめて判断します。
(53) バルブや空気量を調整した後は、気泡の分布、撹拌水流、代表性のある位置のDOを再確認し、別の系統へ新たな偏りが生じていないかも確認します。
(54) 調整したバルブ・設定、観察した気泡・水流、DO等を記録し、次回点検時に変化を比較できるようにします。
散気方式は一種類ではない
(55) 散気装置には、散気管、ディフューザー等、機種・方式の異なる構成があります。
(56) 微細気泡を発生させるメンブレン式散気装置は散気方式の一例です。
(57) すべての浄化槽の散気装置がメンブレン式とは限りません。
(58) 散気装置の圧力損失や必要空気量は方式・機種・使用状態によって異なります。
(59) 散気装置の種類、配置、必要風量、点検・清掃条件は認定型式・維持管理要領・機器資料で確認します。
異常時の読み方
(60) 特定箇所の気泡が著しく少ない場合は、散気部の閉塞や空気配分を確認します。
(61) 槽全体で気泡が出ない場合は、散気装置だけでなくブロワ、接続部、空気配管側も切り分けます。
(62) 一部だけ気泡が極端に強い場合も、他系統への空気配分や散気部の状態を確認します。
(63) 槽内水流が弱い・偏る場合は、空気供給量、散気状態、設備の固定・配置等を確認します。
(64) 散気管の取り外し、分解洗浄、交換、槽内作業等の具体的手順は、型式資料とMA / safety 側で扱います。
試験でのひっかけ
- ブロワと散気装置を同一機器としない。
- ばっ気の目的を酸素供給だけに限定し、撹拌・水流形成を無視しない。
- ばっ気強度とDOを同じ量としない。
L/minのまま槽容量m³で割らず、時間・体積単位をそろえる。- 微細気泡なら、空気量・水深・配置等を無視して必ず最良としない。
- 散気管の閉塞・破損や気泡の偏りを正常としない。
- 左右のバルブ開度を同じにすれば必ず同じ空気量になる、と決めつけない。
- 代表的DO目安を全型式の固定値として暗記しない。
- 一点のDOが良いだけで、槽内全体の散気・撹拌が正常と判断しない。
- 局所的な気泡不足を、確認なしにブロワ総風量不足へ直結させない。
出典・参考
2026-09-03確認。
- 環境省「生活系・事業場系排水の浄化槽による高度処理に関する研究」:運転条件としてばっ気強度
m³/(m³・時)を用いることを確認 - https://www.env.go.jp/policy/digest/h15/pdf/018.pdf
- 環境省「浄化槽法定検査判定ガイドラインについて」:ばっ気装置の固定、空気供給量、撹拌水流、散気装置の閉塞・破損
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000239.html
- 環境省「窒素除去型小型合併処理浄化槽、膜処理型合併処理浄化槽、中・大型合併処理浄化槽、単独処理浄化槽の維持管理ガイドラインについて」:接触ばっ気槽のDO、散気管の目詰まり防止・水平保持
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000288.html
- 環境省「合併処理浄化槽設置整備事業の推進体制の強化について」:空気の出方、水流の片寄りの施工確認
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000054.html
- 環境省「浄化槽のひみつ 接触ばっ気槽部」:ばっ気の基本説明
- https://www.env.go.jp/recycle/jokaso/himitsu/onepoint/18.html
- 環境省「下水道の削減対策リスト」:微細気泡散気装置による酸素移動効率向上、送風量適正化
- https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/measures/sewerage-list.html
- 環境省「浄化槽法第七条及び第一一条に基づく…検査内容及び方法」:DO測定位置
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000233.html
※気泡径、散気孔径、必要風量、空気配分、ばっ気強度、圧力損失、DO設定値等は処理方式・認定型式・設備構成により異なるため、実施設では認定図書・維持管理要領・機器資料を確認します。