膜分離活性汚泥方式

最終更新日: 2026-09-03

膜分離活性汚泥方式とは

(1) 膜分離活性汚泥方式(MBR:Membrane Bioreactor)は、膜による固液分離を組み合わせた活性汚泥法です。

(2) MBRでも、有機物等の生物学的処理は活性汚泥によって行います。

(3) 膜は、活性汚泥を含む混合液から処理水を固液分離する役割を担います。

(4) したがってMBRを、活性汚泥による生物処理を行わず膜だけで汚水を処理する方式とは理解しません。

(5) MBRは固液分離方法の特徴を示す方式であり、生物反応側には複数の活性汚泥処理方式を組み合わせることができます。

JOK-ST-015:膜分離の基礎

(6) 膜処理は、分離機能を持つ膜を介し、圧力差等の駆動力を利用して水と対象物質を分離する処理です。膜によっては粒子の大きさだけでなく、膜素材への溶解・拡散や電荷等も分離に関与します。

MF・UF・NF・RO

(7) 浄水・排水処理分野の代表的な膜は、概ね分離対象が大きい側から MF(精密ろ過)→ UF(限外ろ過)→ NF(ナノろ過)→ RO(逆浸透) の順に整理できます。

(8) MF膜は微細粒子や細菌等の分離に用いられる膜で、MBRではMF膜が代表的に用いられます。

(9) UF膜はMF膜より小さい分離領域を担い、高分子物質や一部のウイルス等の分離に用いられます。

(10) NF膜・RO膜はさらに小さい溶解性物質やイオン等の分離へ用いられ、単に「より細かい網目でこし取る」だけではなく、膜素材との親和性や電荷等も分離機構へ関与します。

(11) MF・UF・NF・ROの孔径や操作圧の区分は、分野・資料・製造者等によって範囲が重なるため、一つの境界値を全ての膜へ共通する絶対的な分類値として固定しません。

(12) MBRは膜処理の一つの適用形態であり、MF・UF・NF・ROを用いる全ての水処理設備がMBRという意味ではありません。

膜モジュールの形

(13) 膜モジュールには、中空糸型、平膜型、スパイラル型、管型等があります。これらは膜の形状・モジュール形式の分類であり、MF・UF・NF・ROという分離領域の分類とは別の軸です。

(14) 中空糸型は、細い中空糸状の膜を多数まとめた構造です。

(15) 平膜型は、シート状の膜を用いる構造です。

(16) 「中空糸型だから必ずMF」「平膜型だから必ずUF」のように、モジュール形式だけから膜の分離領域を一意に決めません。

全量ろ過とクロスフローろ過

(17) 全量ろ過(デッドエンドろ過)は、原水を膜面へ向けて通し、膜を通過しない物質が膜面に蓄積していくろ過方式です。

(18) 全量ろ過では阻止物が膜面に蓄積するため、一定時間ごとに付着物を除去する等の洗浄管理が必要です。

(19) クロスフローろ過は、原水を膜表面に平行に流しながら、その流れの一部を膜へ透過させるろ過方式です。

(20) クロスフローの膜面平行流は、膜表面への付着物蓄積を抑える方向に働き、ろ過と膜面の洗浄作用を並行しやすくします。

(21) クロスフローろ過でもファウリングが完全になくなるわけではなく、膜差圧・透過流束・洗浄等の管理が不要になるわけではありません。

(22) 全量ろ過・クロスフローろ過というろ過方式、MF・UF等の膜の分離領域、中空糸・平膜等のモジュール形式は別の分類軸として読みます。

内圧・外圧と駆動圧

(23) 中空糸膜や管状膜等で、膜の内側に原水を供給して外側へ透過水を得る方式を内圧式として扱います。

(24) 膜の外側に原水を供給し、内側へ透過水を得る方式を外圧式として扱います。

(25) 膜差圧を与える方法には、原水側をポンプで加圧する方法、透過水側から吸引する方法、水位差を利用する方法等があります。

最終沈殿池との違い

(26) 従来の代表的な活性汚泥法では、最終沈殿池で活性汚泥を重力沈降させて処理水と分離します。

(27) MBRでは、この固液分離操作を膜分離で代替します。

(28) このため、MBRの固液分離のために最終沈殿池を設ける必要はありません。

(29) MBRの膜を、最終沈殿池の後段に必ず置く単なる仕上げろ過設備とは理解しません。

(30) 一方、最初沈殿池や前処理設備の構成まで、すべてのMBR施設で同一とは限りません。

膜透過・吸引の読み方

(31) 膜を通過して取り出される水を膜透過水として扱います。

(32) 膜ろ過では、膜の原水側と透過水側の圧力差を利用して水を膜に透過させます。

(33) 吸引ポンプを用いて透過水側から吸引する構成は、膜透過を行う方法の一つです。

(34) ただし、すべてのMBRが同一の吸引ポンプ構成であるとは限りません。

(35) 膜の配置、膜形式、透過水の取り出し方法は、採用する膜システムによって異なります。

膜閉塞・膜差圧

(36) 膜表面への付着物の蓄積や膜細孔の目詰まりなどによって、膜のろ過性能が低下する現象を膜ファウリングとして扱います。

(37) 膜ファウリングが進むと、膜ろ過に対する抵抗が増加します。

(38) 膜差圧は、膜ろ過状態を把握するための重要な運転指標です。

(39) 同じろ過条件で膜差圧が上昇する場合は、膜のろ過抵抗増加を疑う手掛かりになります。

(40) MBRでは低水温時に膜差圧が上昇しやすくなる場合があり、運転管理上の注意が必要です。

(41) 膜差圧だけで原因を断定せず、ろ過量、MLSS、膜洗浄状態、設備状態等と合わせて判断します。

膜洗浄

(42) MBRでは膜のろ過性能を維持するため、物理的な膜洗浄を行う構成があります。

(43) 膜洗浄用の曝気は、気泡を利用して膜面の付着を抑制・除去するために用いられます。

(44) 膜洗浄用曝気の主目的は、膜面の洗浄と膜ろ過性能の維持です。

(45) 生物処理用のばっ気は、活性汚泥による好気性反応に必要な酸素供給を主目的とします。

(46) 膜洗浄用曝気と生物処理用ばっ気は、同じ空気を扱う設備であっても目的を区別して読みます。

(47) 膜システムによっては、物理洗浄に加えて薬品洗浄を行います。

(48) 薬品洗浄の薬剤、濃度、頻度、手順は膜材質・設備仕様・汚れの状態によって異なります。

(49) 薬品洗浄は安全上の注意を要するため、設備の維持管理要領、薬剤の安全データシート等に従います。

MLSSと汚泥管理

(50) MBRでもMLSS濃度の適切な管理が必要です。

(51) 膜固液分離により、活性汚泥などの懸濁固形物を処理水側から分離して系内に保持できます。

(52) MLSSの状態は、生物処理だけでなく膜ろ過運転にも関係します。

(53) 膜で活性汚泥を保持できても、増加した汚泥を余剰汚泥として管理する必要がなくなるわけではありません。

(54) 一つのMBRシステムに示されたMLSS値を、すべてのMBR施設に共通する固定値とはしません。

実例・実製品でイメージする

ここからは、MBRの一般原理を具体化するための実例コラムです。製品名や施設名そのものを暗記対象にはせず、平膜・中空糸膜など複数の実装が存在することを確認します。

(55) 以下の実例に示す膜形状、材質、孔径、運転方式、処理能力等は各製品・施設の仕様です。一つの製品仕様を、すべてのMBRに共通する条件へ一般化しません。

(56) クボタの現行大型合併処理浄化槽では、KM-SG-NP 型および KM-SG-B 型が液中膜(膜分離方式)の対象商品として公開されています。KM-SG-NP は膜分離と循環式高濃度活性汚泥法等を組み合わせた型式例であり、MBRが実際の浄化槽製品にも使われていることを確認できます。

(57) クボタの「液中膜」は、精密ろ過膜を利用した平膜を核とする浸漬型膜ろ過装置として公開され、FF/FS、ES/EK、RM/RW、SP/SPC等の製品系列があります。これは平膜型MBRの具体例であり、「MBRの膜は必ず平膜」という意味ではありません。

(58) 三菱ケミカルの「ステラポアー」は、中空糸膜を用いる浸漬型の下水・排水用膜モジュールで、MBRを用途例として公開しています。これは中空糸型MBRの具体例であり、クボタの平膜例と比較すると、同じMBRでも膜モジュール形式が一つに固定されないことが分かります。

(59) 実施設の例として、クボタの公開事例では兵庫県福崎町の福崎浄化センターに液中膜を用いたMBRが採用されています。公共下水処理場の例ではありますが、膜で活性汚泥と処理水を分離するMBRが実施設で使われる姿を具体化する参考になります。

数値・型式依存の読み方

(60) 一つの膜システムに示された膜差圧の設定値・警報値を、すべてのMBRへ共通する固定値とはしません。

(61) 一つの膜システムに示されたフラックスを、すべてのMBRへ共通する固定値とはしません。

(62) 一つの設備に示された膜洗浄間隔を、すべてのMBRへ共通する固定周期とはしません。

(63) 膜材質・膜形状・膜モジュール形式を、すべてのMBRで同一とは扱いません。

(64) 実施設の膜形式と膜ろ過条件は、適用する設計資料・設備仕様・維持管理要領を確認します。

(65) 実施設のMLSS管理目標は、適用する設計資料・設備仕様・維持管理要領を確認します。

(66) 実施設の膜差圧の管理値・警報値は、適用する設備仕様・維持管理要領を確認します。

(67) 実施設の膜洗浄方法・実施条件は、膜メーカー・設備仕様・維持管理要領を確認します。

異常時の読み方

(68) 膜差圧の上昇や膜ろ過量の低下がみられる場合は、膜ろ過抵抗の増加を含めて状態を確認します。

(69) 膜洗浄用曝気が不足すると、膜面の洗浄状態が悪化する原因になります。

(70) 膜の閉塞・ファウリングと、膜の破損・完全性低下は同じ異常ではありません。

(71) 膜差圧異常を直ちに「膜交換だけが必要」と断定せず、洗浄状態、ろ過条件、MLSS、設備異常等を切り分けます。

試験でのひっかけ

  • MF・UF・NF・ROは相対的な分離対象の違いを先に押さえ、孔径境界を一つの絶対値に固定しない。
  • 全量ろ過・クロスフローはろ過方式、中空糸・平膜はモジュール形式。分類軸を混ぜない。
  • クロスフローでも膜ファウリングや洗浄が不要になるわけではない。
  • MBRを「膜だけの物理処理」としない。生物反応は活性汚泥が担い、膜は主に固液分離を担う。
  • 膜を最終沈殿池の後段に必ず設ける仕上げろ過としない。MBRでは最終沈殿池の重力分離を膜で代替する。
  • 吸引ポンプ方式を唯一の膜透過方式としない。
  • 膜洗浄用曝気と生物処理用ばっ気の目的を混同しない。
  • 「膜は詰まらない」「洗浄不要」としない。
  • 膜差圧・MLSS・フラックス・洗浄周期を全設備共通の固定値として暗記しない。
  • 平膜の製品例、中空糸膜の製品例のどちらか一方をMBR全体の唯一の構成としない。
  • 薬品洗浄の具体条件は型式・膜材質・安全手順を確認する。

責務境界

  • JOK-ST-015の詳細coverage → jokaso_膜分離の基礎_詳細網羅状況.md
  • 膜分離の一般原理、MF/UF/NF/RO、全量/クロスフロー、モジュール形式、MBR固有の膜固液分離・透過・膜差圧・洗浄・閉塞 → 本項目
  • 実施設・実製品の例 → 本項目の補足コラム。ただし製品固有仕様は一般則にしない。
  • 高度処理・再利用設備としての砂ろ過・活性炭吸着・破過 → johkaso-equipment / JOK-ST-040
  • 活性汚泥法全般のMLSS・SRT・余剰汚泥 → activated-sludge-process
  • 標準活性汚泥方式の最終沈殿・返送汚泥 → conventional-activated-sludge
  • SBRの時間サイクル → sequencing-batch-reactor
  • OD法の循環水路・最終沈殿 → oxidation-ditch
  • 膜洗浄薬品の具体的調製・取扱い、点検・修理操作 → MA側
  • MLSS等の具体的測定方法 → WQ/MA側

出典・参考

2026-09-03確認。

※膜差圧、MLSS、フラックス、洗浄頻度、膜材質・形状、透過水の取り出し方式、製品固有仕様などの具体条件は膜システム・施設条件に依存するため、一律値として採用していません。

膜分離活性汚泥方式に関する問題