沈殿分離槽

最終更新日: 2026-09-07

沈殿分離槽とは

(1) 沈殿分離槽は、主に流入汚水中の固形物を重力による沈降と浮上によって水から分離し、後段へ流出しにくくする一次処理の槽です。

沈殿と浮上で分ける

(2) 水より沈みやすい固形物は槽底側へ沈降し、堆積汚泥として保持されます。

(3) 水面側へ浮上した固形物や油脂等は、スカムとして保持されます。

(4) 沈降物と浮上物の間にある比較的固形物の少ない水を、後段の処理へ送ります。

(5) 沈殿分離槽は、分離した汚泥やスカムを槽内に保持して後段への固形物流出を抑える役割を持ちます。

(6) 汚泥やスカムが過度に蓄積すると、これらが流出して後段の処理機能へ影響するおそれがあります。

沈殿分離槽と沈殿槽を混同しない

(7) 公的な構造・検査資料では、前段の「沈殿分離槽」と、生物処理後の固液分離を行う「沈殿槽」を別の単位装置として扱う場合があります。

(8) 分離接触ばっ気方式の告示構造では、沈殿分離槽、接触ばっ気槽、沈殿槽、消毒槽の順に構成されます。

(9) 後段の沈殿槽における返送・汚泥移送等の方式詳細は、沈殿分離槽そのものの機能とは分けて読みます。

分離接触ばっ気方式の構造基準

ここでの具体値は、昭和55年建設省告示第1292号の分離接触ばっ気方式における沈殿分離槽の構造要件です。沈殿分離槽一般や大臣認定型式へ無条件に一般化しません。

(10) 分離接触ばっ気方式の沈殿分離槽は、二室に区分し、直列に接続します。

(11) 第一室の有効容量は、沈殿分離槽の全有効容量のおおむね3分の2とします。したがって第二室は残りがおおむね3分の1になりますが、告示が直接規定しているのは第一室の「おおむね3分の2」です。

(12) 各室の有効水深は、原則として1.2 m以上とします。

(13) 処理対象人員が10人を超える場合、各室の有効水深は1.5 m以上とします。

(14) 第一室の流入管開口部は、水面から有効水深のおおむね3分の1〜4分の1の深さとし、沈殿汚泥を撹乱しない構造とします。

(15) 各室の流出管またはバッフル下端の開口部は、水面から有効水深のおおむね2分の1〜3分の1の深さとし、浮上物が流出しにくい構造とします。

水の流れと短絡

(16) 流入水が堆積汚泥を強く撹乱すると、沈殿分離した固形物を再び流出側へ運ぶ原因になります。

(17) 流出部やバッフルは、浮上物が後段へ流出しにくいように配置される構造があります。

(18) 短絡流が生じると、一部の汚水が本来期待される沈殿分離を十分に受けないまま流出しやすくなります。

水面積負荷

(19) 水面積負荷は、沈殿系の槽について、一定時間に流入する水量を水面積で割って表す水理的な負荷指標です。

(20) 日流量を用いる場合、水面積負荷の単位は m³/(m²・日) で、数値上は m/日 と同じ次元になります。

(21) 水面積負荷が大きいほど、単位水面積当たりに通過する水量が多いことを表します。

(22) 水面積負荷の具体的な上限値は、適用する処理方式・槽構造・告示等の規定を確認して判断します。

(23) 昭和55年建設省告示第1292号の分離接触ばっ気方式等では、所定のホッパー型沈殿槽について水面積負荷を8 m³/(m²・日)以下とする規定があります。

(24) この8 m³/(m²・日)という値を、前段の沈殿分離槽を含むすべての浄化槽の沈殿系装置へ一律に適用することはできません。

BODとSSの物質収支

(25) 流入する総BODには、沈降・浮上しやすい固形物やSSに伴う有機物による成分と、水中に溶けた溶解性BODが含まれます。沈殿分離槽で固形物を捕捉・貯留すれば、固形物とともに後段へ流出するBOD負荷は低下し得ます。

(26) 一方、SSの除去率とBODの除去率は同一ではありません。沈殿によって除きやすいのは主に固形物側であり、溶解性BODがSSと同じ割合で沈殿除去されるわけではありません。

(27) 槽内に蓄積した有機固形物は、嫌気的な環境で分解が進む過程で可溶化され、水中へ溶解性有機物として戻ることがあります。日本環境整備教育センターの公開過去問でも、清掃後の経過に伴って沈殿分離槽流出水の溶解性BODが上昇する挙動が扱われています。

(28) 不溶性の高分子有機物が可溶性の低分子物質へ変わる加水分解の基礎は anaerobic-methanogenesis#hydrolysis-definition で扱います。沈殿分離槽では、その反応機構を重複して暗記するより、捕捉・蓄積した有機物が可溶化して後段の溶解性BOD負荷へ戻り得るという物質収支へ接続して読みます。

(29) したがって沈殿分離槽のBOD挙動は、固形物の沈殿・貯留によって水相から除かれるBODと、蓄積物の可溶化等によって水相へ戻る溶解性BODの収支で考えます。特定施設で観測された実測除去率や、別の単位装置に用いる設計上の除去率を、沈殿分離槽一般の固定値として扱いません。

(30) 「沈殿分離槽のBOD除去率は0%」という全国一律の実測性能値・設計値は、今回確認した公開一次資料・査読研究からは根拠を特定できませんでした。試験対策でも固定値として暗記せず、総BOD・溶解性BOD・SS性有機物のどれを扱うか、実測値か設計計算かを区別します。

法定検査での見方

(31) 環境省の法定検査判定ガイドラインでは、沈殿分離槽について汚泥の堆積状況とスカムの生成状況を確認します。

(32) 同ガイドラインでは、沈殿分離槽から汚泥またはスカムの著しい流出が認められる状態を問題のある状態として扱います。

試験でのひっかけ

  • 「沈むもの」と「浮くもの」を逆にしない。底部は堆積汚泥、水面側はスカムとして読む。
  • 分離接触ばっ気方式では、沈殿分離槽は二室直列で、第一室がおおむね全有効容量の3分の2。二室を等容量とする規定ではない。
  • 分離接触ばっ気方式の沈殿分離槽の有効水深は原則1.2 m以上、処理対象人員が10人を超える場合は1.5 m以上。これを全方式共通値にはしない。
  • 第一室の流入管開口部は有効水深のおおむね1/3〜1/4、流出管・バッフル下端はおおむね1/2〜1/3の深さであり、両者を逆にしない。
  • 沈殿分離槽と、生物処理後の沈殿槽を同じ装置名として扱わない。処理フロー中の位置と役割を見る。
  • 水面積負荷の数値は、どの方式・どの槽構造に対する規定かまで確認する。8 m³/(m²・日) だけを暗記して全型式へ広げない。
  • SSの除去率を、そのままBODの除去率へ読み替えない。槽内に保持した有機物から溶解性BODが水中へ戻ることもある。
  • 汚泥・スカムは貯留できるからといって、蓄積が多いほどよいわけではない。流出リスクまで考える。

責務境界

  • 流入管・流出管・移流部、一般的な短絡流 → inlet-outlet-transfer
  • 汚泥厚・スカム厚の測定、返送・移送、清掃時期の判断 → sludge-management / MA側
  • 加水分解・酸生成・酢酸生成・メタン生成の反応機構 → anaerobic-methanogenesis
  • 活性汚泥方式の最終沈殿・返送汚泥 → activated-sludge
  • 嫌気ろ床槽・接触ばっ気槽の内部構造 → JOK-ST-004 / JOK-ST-005
  • 分離接触ばっ気方式全体の槽構成比較 → JOK-ST-007

出典・参考

2026-09-07確認。

※告示・指針に示される具体的な容量、深さ、水面積負荷等の数値は適用する方式・構造ごとに確認し、別方式・大臣認定型式へ無条件に一般化しません。

沈殿分離槽に関する問題