汚泥負荷(BOD-MLSS負荷)
(1) BOD-MLSS負荷は、単位時間当たりのBOD負荷量を、その負荷を受ける槽内のMLSS質量で割って表す負荷です。
(2) BOD-MLSS負荷の代表的な単位は kg-BOD/(kg-MLSS・日) です。
(3) BOD負荷量が kg-BOD/日、槽内MLSS質量が kg-MLSS で与えられる場合、BOD-MLSS負荷は「BOD負荷量 ÷ 槽内MLSS質量」で求めます。
(4) 槽内MLSS質量は、MLSS濃度とその濃度をもつ混合液の有効容積から求めます。
(5) MLSS濃度を mg/L、有効容積を m³ で表す場合、槽内MLSS質量は「MLSS濃度 × 有効容積 × 10^-3」で kg-MLSS になります。
(6) BOD負荷量が同じなら、槽内MLSS質量が多いほどBOD-MLSS負荷は小さくなります。
(7) 槽内MLSS質量が同じなら、単位時間当たりのBOD負荷量が大きいほどBOD-MLSS負荷は大きくなります。
(8) BOD-MLSS負荷は、活性汚泥が受ける有機物負荷と汚泥量の比をみるF/Mの考え方に基づく指標です。
(9) BOD-MLSS負荷はMLSS質量を分母にする指標であり、処理槽の有効容積を分母にするBOD容積負荷とは別の量です。
(10) BOD-MLSS負荷はMLSS濃度そのものではなく、BOD負荷量と槽内MLSS質量の比です。
(11) BOD-MLSS負荷は有機物負荷と槽内MLSS質量の比であり、汚泥が系内に滞留する時間を表すSRT(汚泥日齢)とは別の指標です。
計算の考え方
MLSS濃度だけが与えられている場合は、まず対象槽の有効容積を使って槽内MLSS質量を求め、その後にBOD負荷量をそのMLSS質量で割ります。
例として、MLSS濃度 3,000 mg/L、有効容積 2.0 m³ の槽内MLSS質量は 3,000 × 2.0 × 10^-3 = 6.0 kg-MLSS です。この槽が 0.90 kg-BOD/日の負荷を受ける場合、BOD-MLSS負荷は 0.90 ÷ 6.0 = 0.15 kg-BOD/(kg-MLSS・日) です。
また、MLSS濃度を kg/m³ で表す場合、BOD容積負荷をMLSS濃度で割ってBOD-MLSS負荷を求められます。
JOK-WQ-028:容積負荷・汚泥負荷の計算と運転状態
(12) WQ-028では、同じBOD負荷量を「槽容積当たり」と「槽内MLSS質量当たり」の二つの分母で規格化し、BOD容積負荷とBOD-MLSS負荷を同時に計算する。両者は同じ有機物負荷を別の基準で見た指標なので、数値や単位を混同せず、BOD負荷量・有効容積・MLSS濃度のどれが変化したかを分けて読む。
- (13) 同じ時間基準のBOD負荷量
L [kg-BOD/日]、有効容積V [m³]、MLSS濃度X [mg/L]が与えられたとき、BOD容積負荷はL ÷ V、槽内MLSS質量はX × V × 10^-3、BOD-MLSS負荷はL ÷ (X × V × 10^-3)で求める。 - (14) BOD負荷量1.2 kg-BOD/日、有効容積3.0 m³、MLSS濃度4,000 mg/Lなら、BOD容積負荷は
1.2 ÷ 3.0 = 0.40 kg-BOD/(m³・日)、槽内MLSS質量は4,000 × 3.0 × 10^-3 = 12 kg-MLSS、BOD-MLSS負荷は1.2 ÷ 12 = 0.10 kg-BOD/(kg-MLSS・日)である。 - (15) 同じBOD負荷量・同じ有効容積を基準にするなら、MLSS濃度を
kg-MLSS/m³に直して、BOD-MLSS負荷 = BOD容積負荷 ÷ MLSS濃度[kg-MLSS/m³]と表せる。4,000 mg/Lは4.0 kg/m³なので、0.40 ÷ 4.0 = 0.10 kg-BOD/(kg-MLSS・日)となる。 - (16) BOD負荷量と有効容積が変わらず、MLSS濃度だけが変化した場合、BOD容積負荷は変わらない。一方、BOD-MLSS負荷は槽内MLSS質量を分母にするため、MLSS濃度が高くなれば小さくなり、低くなれば大きくなる。
- (17) 上の例でBOD負荷量1.2 kg-BOD/日、有効容積3.0 m³を保ったままMLSS濃度が6,000 mg/Lになれば、槽内MLSS質量は18 kg-MLSS、BOD-MLSS負荷は
1.2 ÷ 18 ≒ 0.067 kg-BOD/(kg-MLSS・日)になる。BOD容積負荷は引き続き0.40 kg-BOD/(m³・日)である。 - (18) 有効容積とMLSS濃度が同じままBOD負荷量が増えれば、BOD容積負荷とBOD-MLSS負荷はいずれも大きくなる。逆に、BOD負荷量が同じまま有効容積が大きくなり、MLSS濃度も同じなら、槽内MLSS質量も増えるため両負荷は小さくなる。
- (19) BOD-MLSS負荷が変化したときは、BOD負荷量の変化か、MLSS質量の変化か、または両方かを切り分ける。MLSS濃度を変える操作はBOD-MLSS負荷へ直接影響するが、BOD負荷量と有効容積が同じならBOD容積負荷そのものは変えない。
- (20) BOD容積負荷やBOD-MLSS負荷の標準値・設計値は処理方式によって異なる。環境省の構造指針でも、同じ活性汚泥系で方式ごとに異なるBOD容積負荷、BOD-MLSS負荷、MLSS濃度が示されているため、一つの数値を全方式共通の正常値として扱わない。
WQ-028の試験での見分け方
- (21) 「BOD負荷量1.2 kg/日をMLSS濃度4,000 mg/Lで直接割れば汚泥負荷になる」→ 誤り。MLSS濃度はまず対象槽の有効容積を使って槽内MLSS質量へ直す。
- (22) 「MLSS濃度を上げればBOD容積負荷も必ず下がる」→ 誤り。BOD負荷量と有効容積が同じなら、MLSS濃度だけを変えてもBOD容積負荷は変わらない。
- (23) 「BOD容積負荷とBOD-MLSS負荷は同じBOD負荷を使うので数値も単位も同じ」→ 誤り。分母がm³とkg-MLSSで異なる別指標である。
- (24) 「ある方式の標準BOD-MLSS負荷を全ての活性汚泥方式の正常値として使える」→ 誤り。標準値・設計値は方式ごとに確認する。
他タグとの責務境界
pollutant-load: 濃度と流量から kg-BOD/日等の単位時間当たり汚濁物質質量を求める。volumetric-loading: BOD負荷量を処理槽等の有効容積で規格化する。sludge-loading: BOD負荷量を槽内MLSS質量で規格化する。hydraulic-load: 流量、ピーク流入、V/Qによる滞留時間等を扱う。- JOK-WQ-028:
volumetric-loadingとsludge-loadingの原本を利用し、計算や運転状態との関係を水質管理側で扱う。 - 返送汚泥率・循環比: JOK-WQ-029等の運転管理側で扱う。
- SRT・汚泥日齢: 活性汚泥の保持・増殖や維持管理の別学習単位で扱う。
- 処理方式ごとの標準値・許容値: 方式・設備ごとのST/WQ解説で、その時点の一次資料に基づいて扱う。
覚え方・ひっかけ
- 分母が m³ なら容積負荷、分母が kg-MLSS なら汚泥負荷。
- MLSS濃度 mg/L をそのまま分母にせず、槽容積を使って槽内MLSS質量へ直す。
MLSS濃度 × m³ × 10^-3 = kg-MLSS。- BOD負荷量と有効容積が同じなら、MLSS濃度の変更はBOD容積負荷を変えず、BOD-MLSS負荷を変える。
- BOD-MLSS負荷の標準値は処理方式によって異なるため、一つの数値を全方式共通として覚えない。
出典・参考(2026-09-02確認)
- 環境省「し尿処理施設構造指針及び廃棄物最終処分場指針の改訂について」
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000206.html
- 同一の活性汚泥法処理設備でBOD容積負荷とBOD-MLSS負荷を別指標として示し、曝気槽容量を両負荷により決定する例を確認。処理方式によって両負荷の標準値が異なることも確認。
- 環境省「ごみ処理施設構造指針の改正及び生活排水処理施設構造指針の策定について」
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000131.html
- 長時間ばっ気方式と標準活性汚泥方式でBOD-MLSS負荷・MLSS濃度の標準値が異なり、ばっ気槽容量をBOD-MLSS負荷及びMLSS濃度によって定めることを確認。
- 環境省「粗パーム油製造工場の排水対策ガイドライン」
- https://www.env.go.jp/en/water/wq/ine/pdf/tool/guideline-jp.pdf
- BOD負荷をF/Mの概念として説明し、汚泥負荷を
LfQ/(V×S)、単位を kg-BOD/(kg-MLSS・日) としていること、容積負荷と汚泥負荷を別々に定義していることを確認。