浮遊生物法と生物膜法
(1) 浮遊生物法は、微生物をフロックなどの形で水中に浮遊させて保持し、その微生物群によって有機物などを処理する生物処理法です。
(2) 生物膜法(固着生物法)は、微生物を接触材・担体などの固体表面に生物膜として付着させて保持し、汚水を生物膜に接触させて処理する生物処理法です。
(3) 浮遊生物法と生物膜法を分ける基本軸は、微生物を水中の浮遊フロックとして保持するか、固体表面の生物膜として保持するかです。
(4) 活性汚泥法は、活性汚泥フロックを水中に保持して処理する代表的な浮遊生物法です。
(5) 標準的な連続流活性汚泥法では、固液分離した活性汚泥の一部を反応槽側へ返送し、槽内の微生物量を維持します。
(6) 返送汚泥は標準的な活性汚泥法で重要な微生物保持手段ですが、返送汚泥の有無だけで浮遊生物法と生物膜法を定義することはできません。
(7) 接触ばっ気方式は、接触材に付着した生物膜をばっ気しながら汚水と接触させる代表的な生物膜法です。
(8) 接触材などに形成された生物膜は、微生物の増殖によって肥厚することがあります。
(9) 生物膜は肥厚や水流・逆洗などの影響により、接触材などの表面から剥離することがあります。
(10) 剥離した生物膜は剥離汚泥として水中に移るため、後段での固液分離や汚泥移送・引抜きなどの管理が必要になります。
(11) 生物膜法は接触材や担体を用いていても、単なる物理ろ過ではなく、付着微生物による生物反応を利用する処理です。
比較の考え方
「浮遊か付着か」は設備名ではなく、微生物をどのように系内へ保持しているかを見ます。標準活性汚泥法の返送汚泥や、接触ばっ気槽の生物膜・剥離汚泥は、この保持方法の違いから生じる代表的な運転・管理上の特徴です。
生物相を同じ軸で比べる
(12) 活性汚泥法と生物膜法は微生物の保持方法が異なりますが、どちらも細菌などの微生物群による生物反応を利用します。「活性汚泥法にだけ存在する生物」「生物膜法にだけ存在する生物」という単純な二分で理解しません。
(13) 保持方法が違うと、微生物が存在する場所、固形物の滞留・剥離、酸素や基質が届く条件などが変わるため、観察される生物相や優占しやすい群に差が生じることがあります。ただし、その差は処理方式名だけで一意に決まるものではありません。
(14) 生物膜は固体表面に厚みをもって形成されるため、膜表面と内部で酸素・基質の供給条件が異なり得ます。生物膜を「槽内のどこでも同じ状態の微生物層」とみなさず、厚さ・負荷・ばっ気・流れ等による局所条件の違いを考えます。
(15) 活性汚泥法では、浮遊フロックとして保持された微生物群をMLSS、沈降性、返送汚泥等と合わせて管理します。顕微鏡で見える生物相も、単独で処理状態を断定するのではなく、DO、負荷、水温、汚泥性状、水質等と組み合わせて評価します。
(16) 生物膜法でも生物膜や剥離汚泥中に微生物群を観察できますが、活性汚泥の混合液と同じ採取・観察条件とは限りません。観察場所や剥離状態、方式構造を無視して、生物の有無だけから方式や処理性能を断定しません。
(17) したがって、保持方式の比較はJOK-OV-016で扱い、生物群・指標生物・観察解釈はJOK-OV-017 / JOK-WQ-023で扱います。「浮遊か付着か」と「どの生物が見えるか」は関係しますが、同じ分類軸ではありません。
他タグとの責務境界
suspended-vs-attached-growth: 浮遊フロックと付着生物膜という保持方法、標準活性汚泥法の返送汚泥、生物膜の肥厚・剥離という比較原理を扱う。生物相比較では保持状態が生物の存在環境へどう影響するかまでを扱う。activated-sludge-microbiology: 活性汚泥を中心とした主要生物群、フロック形成、指標生物、生物相観察の解釈を扱う。activated-sludge: 活性汚泥法の方式構成、MLSS、汚泥返送、沈降・固液分離等の詳細を扱う。既存legacyのaccuracy correctiveはIssue #118で行う。contact-aeration: 接触ばっ気方式の接触材、ばっ気、逆洗、剥離汚泥等の方式詳細を扱う。既存legacyのaccuracy correctiveはIssue #118で行う。- JOK-WQ-023: 顕微鏡操作、生物相からの状態推定、単独判断の危険を扱う。
- ST/MA/WQ: 各方式の槽構造、設計値、DO・MLSS等の測定、点検・調整を扱う。
覚え方・ひっかけ
- 「返送汚泥があるから浮遊生物法」ではなく、まず微生物の保持状態を見る。
- 生物膜は接触材に付着していても永久固定ではなく、肥厚・剥離し得る。
- 生物膜が剥離すれば固形物として扱う必要があり、「生物膜法は汚泥処理不要」にはならない。
- 接触材を使うからといって、生物膜法を単なる物理ろ過と考えない。
- 「この生物がいるから必ず活性汚泥法 / 生物膜法」と方式を一意に決めない。
- 生物相観察だけで処理性能を断定せず、DO・負荷・水質・汚泥/生物膜状態と合わせて読む。
出典・参考(2026-09-04確認)
- 国土交通省「終末処理場のしくみ」
- https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000417.html
- 生物処理法を浮遊生物法と固着生物法(生物膜法)に分け、前者は水中の活性汚泥、後者は固体表面の生物膜を利用することを確認。
- 環境省「イラスト大解剖 接触ばっ気槽部」
- https://www.env.go.jp/recycle/jokaso/himitsu/onepoint/18.html
- 接触材に付着する生物膜をばっ気しながら汚水と接触させることを確認。
- 環境省「浄化槽法の運用に伴う留意事項について」
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000243.html
- 接触ばっ気槽で生物膜の過剰肥厚、剥離汚泥、堆積汚泥が管理対象となることを確認。
- 環境省「窒素除去型小型合併処理浄化槽等の維持管理ガイドライン」
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000288.html
- 生物膜の付着状況、接触材の逆洗、剥離汚泥の移送等を確認。
- 環境省「し尿処理施設構造指針」
- https://www.env.go.jp/hourei/11/000206.html
- 標準的な活性汚泥法で返送汚泥により所定のMLSS濃度を維持することを確認。
- 環境省「産業排水処理技術ガイドライン」
- https://www.env.go.jp/air/tech/ine/asia/indonesia/files/guide/guideline-jp.pdf
- 標準活性汚泥法の返送汚泥と、沈殿槽に代えて膜分離を用いる方式があることを確認。