沈殿槽・沈殿室

最終更新日: 2026-08-30

沈殿槽・沈殿室とは

(1) 沈殿槽・沈殿室は、固形物を重力沈降によって水から分離する単位装置です。

(2) 浄化槽では、生物処理槽の後段に沈殿槽を設けて固液分離し、その上澄水を消毒槽などの後段へ送る構成があります。

(3) 沈降した固形物は槽底側に汚泥として集積します。

(4) 固形物が沈降した後の比較的清澄な上澄水を、越流ぜき等から後段へ送ります。

(5) 沈殿槽の主目的は固液分離であり、ばっ気して有機物を分解する主反応槽そのものではありません。

前段の沈殿分離槽との違い

(6) 前段の沈殿分離槽は主に流入汚水中の固形物を一次分離・貯留するのに対し、本項目の沈殿槽・沈殿室は主に生物処理後の固液分離を担います。

(7) どちらも重力沈降を利用しますが、処理フロー中の位置と分離対象を区別して読みます。

(8) 公的資料には「沈殿槽」のほか、「重力返送式沈殿室」「重力移送式沈殿室」などの名称もあります。

(9) 「沈殿室」「沈殿槽」という名称だけで汚泥の返送先・移送方法・引抜き方法まで一律に決めることはできません。

越流ぜきと上澄水

(10) 越流ぜきは、沈殿槽の上澄水を後段へ越流させる流出部です。

(11) 越流ぜきでは、処理水ができるだけ均等に越流する状態を保つことが重要です。

(12) 越流が不均等な場合は、越流ぜきの水平などを確認して必要な調整を行います。

(13) 越流ぜきへの異物・付着物も点検し、付着が認められた場合は除去します。

(14) 法定検査では、沈殿槽の水位及び水流の異常が処理機能に影響していないかを確認します。

汚泥界面

(15) 汚泥界面は、沈殿して形成された汚泥層の上面と、その上の上澄水側との境界位置を表します。

(16) 汚泥界面の位置は、沈殿槽内にどの程度汚泥が蓄積しているかを把握する手掛かりになります。

(17) 汚泥界面が上昇すると、汚泥層の上に残る清澄な分離空間が小さくなります。

(18) 汚泥界面は、汚泥の返送・移送・引抜きの状態や流出水の状態とあわせて確認します。

(19) 正常とする汚泥界面の具体的な高さ・深さは槽の形状、水深、処理方式、運転条件等に依存するため、一つのcm値を全型式へ固定適用しません。

沈殿汚泥の返送・移送・引抜き

(20) 沈殿した汚泥は、槽内に無制限に蓄積させず、処理方式に応じて返送・移送・引抜き等の管理を行います。

(21) 活性汚泥法では、最終沈殿で分離した汚泥の一部を反応槽へ返送して活性汚泥を保持する構成が代表的です。

(22) 活性汚泥法では、系内で増加した汚泥の一部を余剰汚泥として系外の汚泥処理側へ引き抜きます。

(23) 接触ばっ気方式等では、沈殿槽に集積した汚泥を前段の沈殿分離槽等へ移送する構造があります。

(24) 公的な維持管理資料には、重力返送式沈殿室や重力移送式沈殿室・沈殿槽など、ポンプ返送とは異なる構造も示されています。

(25) 沈殿汚泥の返送先、移送先、引抜き方法は、処理方式・沈殿槽構造・認定型式によって異なります。

(26) 沈殿槽の汚泥はすべて必ず生物反応槽へ返送する、と一般化してはいけません。

堆積汚泥・浮上汚泥・スカム

(27) 法定検査では、沈殿槽の汚泥の堆積状況とスカムの生成状況を確認します。

(28) 汚泥の著しい堆積やスカムの生成によって流出が明らかな状態は、処理機能上の問題として扱われます。

(29) 浮上汚泥やスカムがそのまま後段へ流出する状態を正常な固液分離とはしません。

(30) 維持管理では、スカムや著しい堆積汚泥の生成状況に応じて、移送、運転条件の調整、清掃等の必要な措置を判断します。

(31) 浮上汚泥・スカムの原因は処理方式や運転状態によって異なるため、発生原因を一つに固定せず、槽内状況と前後工程を確認します。

水面積負荷と越流負荷

(32) 水面積負荷は、沈殿槽へ流入する水量を沈殿槽の水面積で割って表す水理的な負荷指標です。

(33) 日流量を用いる場合、水面積負荷の単位は m³/(m²・日) です。

(34) 越流負荷は、越流する水量を越流ぜきの長さで割って表す負荷指標です。

(35) 日流量を用いる場合、越流負荷の単位は m³/(m・日) です。

(36) 建設省告示第1292号第一第一号の分離接触ばっ気方式では、所定のホッパー型沈殿槽について水面積負荷を 8 m³/(m²・日) 以下とする規定があります。

(37) 同じ告示構造では、沈殿槽から消毒槽への越流ぜきについて越流負荷を 20 m³/(m・日) 以下とする規定があります。

(38) この 820 は告示第一第一号の所定構造に対する値であり、すべての沈殿槽・沈殿室・大臣認定型式へ全国一律に適用する数値ではありません。

(39) 他の処理方式・施設指針等では異なる水面積負荷・越流負荷が示されることがあるため、数値は対象構造とセットで読みます。

(40) 令和7年の告示第1292号改正は第12の大腸菌数基準に関する改正であり、ここで扱う第一第一号の沈殿槽の水面積負荷・越流負荷を変更するものではありません。

点検での読み方

(41) 越流ぜきでは、付着物と越流の均等性を確認します。

(42) 沈殿槽では、汚泥界面を含む汚泥の蓄積状態を確認します。

(43) 水面側では、浮上汚泥・スカムの生成と流出の有無を確認します。

(44) 汚泥返送・移送装置がある場合は、その稼働と実際の汚泥移送先を確認します。

(45) 沈殿槽流出水の濁りや固形物流出も、固液分離状態を判断する重要な情報です。

(46) 実施設の沈殿槽形式、汚泥返送・移送経路、設定値は、適用する構造方法・認定型式・維持管理要領で確認します。

試験でのひっかけ

  • 前段の沈殿分離槽と、生物処理後の沈殿槽・沈殿室を同じ役割として扱わない。
  • 越流ぜきは一部だけに集中して越流するほどよい、としない。
  • 汚泥界面は高いほど固液分離能力が上がる、としない。
  • 浮上汚泥・スカムの流出を正常状態としない。
  • 沈殿汚泥はすべて必ず反応槽へ返送する、としない。
  • 8 m³/(m²・日)20 m³/(m・日) を全型式共通値として暗記しない。
  • 水面積負荷と越流負荷では、割る面積・長さと単位が異なる。

責務境界

  • 流入前段の沈殿分離槽sedimentation-separation-tank
  • 活性汚泥法全体の返送汚泥・余剰汚泥・MLSS・SRT → activated-sludge-process
  • 接触ばっ気槽の生物膜・逆洗 → contact-aeration-tank
  • 沈殿槽・沈殿室の固液分離、越流、汚泥界面、汚泥返送/移送方式差、浮上汚泥 → 本項目
  • 汚泥濃縮・貯留槽 → sludge-thickening-storage
  • 汚泥厚・界面測定の具体的手技、返送量調整、清掃時期の実務判断 → MA / CL側

出典・参考

2026-08-30確認。

※沈殿槽の水面積負荷、越流負荷、容量、水深、汚泥界面の管理値、返送・移送条件は適用する構造・型式・施設条件で異なるため、一律の固定値として採用しません。

沈殿槽・沈殿室に関する問題